日本マイクロソフトは、就労支援の新たな取り組みとして、被災者向け就労支援プログラム「東北UPプロジェクト」を開始すると発表した。
これは同社が11月25日に東日本大震災の復興施策関係者を対象に開催した「コミュニティITスキル(UP)プログラム」セミナーにおいて明らかにしたもので、岩手、宮城、福島の東北三県の被災者を対象に、ICTスキル習得を通して就労機会の拡大を支援することになる。
プロジェクトは、日本マイクロソフトとNPO法人の「育て上げ」ネットが協働で行うという。
日本マイクロソフト代表執行役社長 樋口泰行氏
日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏は、「復興しなくてはいけないという強い気持ちを持つ被災地の方々に対して、微力ながらお役に立ちたい。今年、Microsoft日本法人は、社名に日本という名前をつけた。これは日本に根付いて、日本に貢献したいという気持ちを込めたもの。東北UPプロジェクトにも同じ気持ちを持って取り組んでいきたい」とした。
東北地方における被災者向け就労支援の取り組みの詳細については、「育て上げ」ネット理事長の工藤啓氏が説明。「現在取り組んでいるITを活用した若者就労支援プロジェクト(若者UPプロジェクト)の経験を生かして取り組んでいく。復興に移行したエリアについては雇用が問題になっている。ICTスキルがないと職を得られないという場合もある。また、被災地の若者を都市部に流出させないということでも支援できるだろう」など、プロジェクトの狙いを示した。
同プロジェクトは、2012年1月1日〜2013年3月末までの15カ月間を実施期間とし、まずは1、2カ所の自治体でスタート。順次、協力してもらえる現地のNPOとの関係を築くことで、支援規模を拡大していくという。
日本マイクロソフトでは、ICTスキル講習カリキュラムおよびテキストの開発、支援を行うNPOへのIT講師養成研修の実施、被災者へのWindows 7およびOffice 2010、Office 365を主体としたICTスキル講習の実施、プロジェクトのポータルサイトを通したトレーニングマテリアルの提供、アドバイザリーボードの設置と運営、自治体および民間による就労出口施策との連携などを行い、被災地である東北三県での雇用施策の充実、プロジェクト実施団体のキャパシティビルディング、被災者の雇用機会の拡大などの効果を見込んでいる。
厚生労働省によると、被災三県の雇用保険離職票等交付件数は、震災以降18万件にのぼり、前年同期比1.7倍となるなど、復興支援のなかでも雇用確保は喫緊の課題となっている。
日本マイクロソフトでは、過去10年間に渡ってICTを活用した就労支援プログラムを実施してきた経験を生かし、NPO法人を通じて被災者に対するICTスキル講習を実施。就労に必要となる基本的なICTスキルの定着を支援するとした。
SAVE TAKATA共同代表 佐々木信秋氏
陸前高田市 副市長の久保田崇氏はビデオメッセージで、「被災地では雇用の問題が大きい。若い人たちが陸前高田に残りにくいという環境もある。ITスキルを底上げすることで、選択肢が広がる可能性もある。今回のプロジェクトの成果に期待している」とコメント。また、被災地支援パートナーである一般社団法人SAVE TAKATA共同代表の佐々木信秋氏は、「陸前高田は被災後に全国から注目を集めているが、そのチャンスを生かせないということを感じる。地元で多くの人たちと名刺交換をしているが、企業のホームページの記載がなく、メールアドレスの記載もない。これがチャンスを生かせていない理由。ITリテラシーの底上げが大きな課題であることを痛感している」と指摘。
NPO事業サポートセンター専務理事 池本修悟氏
NPO法人NPO事業サポートセンター専務理事の池本修悟氏は、「東北UPは、企業ができる支援のものとして、すばらしい企画だと考えている。被災地から年賀状を出したいという人に対しても、ITのリテラシーを活用できるだろう。NPOだけではできないことが実現できるという点でも期待している」などと語った。