長期政権が見込まれるパナソニック津賀新体制 松下幸之助の言葉で読み解く

大河原克行

2012-03-05 11:17

 創業者の松下幸之助から数えて8代目、創業家を除けば55歳という最年少だ。

 6月27日付けでパナソニックの社長に就任する津賀一宏氏は、大坪社長から11歳も若返るいわば「若さ」という点での評価が注目される。

 6月27日付けの新体制で取締役において津賀氏よりも年下となるのは、常務取締役の宮部義幸氏だけ。常務役員以上でも欧州市場などを担当するローラン・アバディ氏だけである。そして、役員にまで幅を広げても、最年少となる、唯一の女性役員である宮部真千子氏とも4年の違い。こうしたことからも、津賀新社長への若返りが異例のものであることがわかるだろう。

 創業100周年となる2018年を津賀社長体制で迎えるのは確実で、松下幸之助が社長を退いた66歳を超えないという同社の不文律をもとにすれば、11年間という長期政権が視野に入ることになる。

 津賀次期社長は「スピード感がなければ55歳でも意味がない」とし、「私自身のプレッシャーは55歳で若いということではなく、スピード感を持った経営ができるのかが最大のプレッシャー。年齢がどうかという不安はない」と語る。

 津賀次期社長は大阪府出身で1956年11月生まれ。79年に大阪大学 基礎工学部 生物工学科を卒業後、パナソニック(当時の松下電器産業)に入社。2001年にマルチメディア開発センター所長に就任。47歳だった2004年には役員に就任し、デジタルネットワーク・ソフトウェア技術担当兼ソフトウェア開発本部長として、デジタル機器向けソフトウェア開発を統括。2008年には常務役員に就任するとともに、カーナビゲーションシステムを担当するパナソニックオートモーティブシステムズ社社長に就任。2011年には専務役員に就任するとともに、薄型テレビなどを担当するAVCネットワークス社社長に就任。同年には専務取締役に昇格した。

 パナソニックオートモーティブ社およびAVCネットワークス社の社長時代には、大胆なリストラを実行。AVCネットワークス社の改革は現在進行中であり、道半ばだといえるが、オートモーティブ社の構造改革では収益改善に大きな成果をあげ、その手腕が次期社長としても注目されることになる。

 だが、その一方で中村邦夫氏、大坪文雄氏と続いた海外経験者の社長就任から、一転して海外経験がない津賀氏の采配を懸念する声もある。海外売り上げ比率を今後60%にまで引き上げたいとするなかで、どんな舵取りを行うのか。そして気の早い話だが、津賀氏の後継育成という点では、津賀氏の年齢や在任が予想される期間から逆算すれば、現在の役員以外からの登用が現実的であり、そうした次世代後継者の育成も注目されることになろう。

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