中期経営計画に「手応え」の日立、目標達成を「断念」したパナソニック

大河原克行

2012-05-16 09:00

本特集「電機大手の2011年度決算を読む」では、各社の決算を分析することで、電機メーカー、ひいては日本のものづくりの課題と展望を明らかにしたいと考えている。

第2回となる本稿で取り上げるのは、明暗がくっきり分かれた日立製作所とパナソニックだ。(ZDNet Japan編集部)

一人勝ちの日立製作所

 国内電機最大手の日立製作所は、連結売上高が前年比3.8%増の9兆6658億円、営業利益は7.3%減の4122億円、税引前利益は29.0%増の5577億円、当期純利益は45.3%減の3471億円となった。最終利益は、2期連続で過去最高を更新するという好調ぶりだ。電機大手8社のなかでは、唯一、増収増益を達成している。

 東日本大震災およびタイ洪水被害の影響によって、売上高で3200億円、営業利益で950億円、最終利益で800億円のマイナス要因があったものの、それを跳ね返しての好業績であり、同社の体質改善が着実に成果をあげていることを証明するものとなった。

日立製作所の中西宏明社長
日立製作所の中西宏明社長

 日立製作所の中西宏明社長は、「タイの洪水被害、震災の影響があったものの、当初目標をクリアできた。ITと社会インフラの融合による社会イノベーション事業の加速、経営基盤の強化による収益安定化の成果があがっている」と自信をみせる。

 また、中村豊明副社長も「震災の影響、タイ洪水被害の影響を考慮すると、営業利益率は5.1%。5%台の営業利益を稼げる状態になってきたと判断している」と、異口同音に体質改善の成果があがっていることを示す。

 セグメント別では、10部門のうち、コンポーネント・デバイスとデジタルメディア・民生機器を除く8部門で増収。営業利益では、電力システムとデジタルメディア・民生機器が赤字となったが、社会イノベーション事業の中核をなす情報・通信システムや、同社が得意とする高機能材料などの収益が、これをカバーしてもあまりある黒字を計上している。

一時は業界最大の赤字を計上も「遠ざける事業」で収益改善

 日立製作所は、2008年度業績において7873億円という電機業界で過去最大となる最終赤字を計上しており、それ以降、他社に先駆けた構造改革に着手してきた経緯がある。

 社会インベーション事業を中核事業に位置づけ、事業を大きく再編。今年4月には、社会イノベーション事業を加速するために、同事業をインフラシステムグループ、情報・通信システムグループ、電力システムグループ、建設機械グループ、高機能材料グループの5グループ体制へと再編。「内部管理しやすい従来の体制から、マーケットにフィットした形へとシャッフル」(中西社長)し、さらに横断的組織として社会イノベーション・プロジェクト本部を新設。社会インフラ事業とIT(情報・通信)事業との融合による新事業の創出にも取り組む。

 一方で、薄型テレビの生産拠点を相次いで売却したほか、ハードディスク事業の売却、上場子会社の完全子会社化、子会社の大胆な構造改革といった大規模な事業再編に打って出た。

 「テレビは家電の顔。内製をストップする決断に、すごい抵抗があったのが正直なところ。しかし、決断をしてみると、内製をせずに継続的に製品を供給することができ、赤字を出さずにやれる道筋がついた」と中西社長は振り返る。

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