日立製作所は4月5日、マレーシアの金融ITソリューション企業eBworx Berhadの株式を公開買い付け(TOB)で取得する手続きを開始した。日立による事実上の買収となる。買付の総額は100%取得時で約47億円。
eBworxは、マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイ、中国などのアジア地域で、インターネットモバイルバンキングシステムや融資管理システムなどを提供する企業。マレーシアやシンガポールの大手銀行などが顧客だという。日立はeBworxを買収することで、顧客基盤やソフトウェア製品、人材などを獲得し、東南アジアや中国でのシステムソリューション事業を拡大させたい考えだ。
具体的には、金融機関向けシステムソリューションを包括的に提供するための事業基盤を獲得することになる。買収後は、米Hitachi Consultingを中心にグループのネットワークを活用。アジア地域でグローバル事業への投資を拡大させる日系および現地の金融機関を対象に、ワンストップのサービス体制を確立させる。
同社が金融ITの企業を買収するのは「国内でも国外でも初」(広報部)。日立 広報部によれば、同社は今後もM&Aを活用した経営リソースの獲得を進めるとしている。
日立は2011年だけでも1月にITサービスの米Sierra Atlanticを、スペインのITコンサルティング企業Sociedad de consultores Aptivoを、9月にストレージの米BlueArcを、10月に南アフリカ共和国のITサービス企業Shoden Data Systemsを買収している。
日立は2010年度に策定した「2012中期経営計画」で、海外売上高比率50%以上(2010年度実績は43%)、海外人員比率36%(2010年度実績33%)を目標としている。グローバル化にあたっては、パートナーと連携した事業機会の拡大を狙っており、中でも新興国の政府機関等とのパートナーシップで社会イノベーション事業の拡大を図るとしていた。
また、同社では情報・通信システム事業全体で2010年度に約3900億円だった海外売上高を、2015年度には8000億円に拡大させることを目指している。