独SAPが米国時間5月15日、米フロリダ州オーランドで開催中の年次イベント「SAPPHIRE NOW 2012 Orlando」で新たなクラウド戦略を発表した。SAPは2月にクラウド人材管理のSuccessFactors買収を完了、最新の戦略は両社のクラウド製品を合わせて再構築するものとなる。
ステージに立ったのは、SuccessFactorsの設立者兼最高経営責任者(CEO)で、SAPのエグゼクティブボードのメンバーとなったLars Dalgaard氏、SAPがクラウド戦略の舵取りを託した人物だ。SAPが34億ドルを投じてSuccessFactorsを買収すると発表したのは、2011年12月。それから買収手続きの完了を経てSAPは、SuccessFactorsのDalgaard氏をエグゼクティブボードメンバーとし、SuccessFactorsと既存のクラウド事業部を合体させた新しいクラウド組織の統括役に任命した。
SAPがクラウドへの参入を明らかにしたのは2007年だが、その後もクラウド戦略はなかなか離陸しなかった。2年半前に共同CEO体制に入った際も、両CEOはクラウドをフォーカス分野の1つと強調していた。そして今回、クラウドをDNAに持つDalgaard氏に責任を持たせることで、クラウド事業を一気に加速する狙いだ。
Dalgaard氏はまず、SAPカンパニーに加わる自分の会社、SuccessFactorsを紹介した。SuccessFactorsはクラウド最大手で、10年前の創業時からクラウドのみを専業とする「100%クラウドカンパニー」という。現在の顧客数は3500社で、エンドユーザー数は1560万人。160カ国以上で利用されており、34言語に対応する。「事業の成長率は2番手の3倍以上」とDalgaard氏は胸を張る。
Dalgaard氏はSuccessFactorsのサービスについて「われわれは世界で最も小さなクラウドから大きなクラウドまで手がけている」と説明する。エンドユーザー数が13人のところもあれば、20万人以上の実装もユーザー企業の約4分の1を占めるという。
このような拡張性に加え、クラウドサービスで指摘される信頼性、セキュリティについても対策を講じている。世界6カ所にデータセンターを構え、仏独などで工場協議会のレビューを受けており、BS10012をはじめ各地の安全に関する基準なども批准している。技術系セキュリティ大手6社を顧客に持ち、クレジットカードや銀行などもSuccessFactorsのクラウドを使っているという。
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そのようなSuccessFactorsとSAPの合体が何を意味するのか――。ビジネスアプリケーションとして長い歴史を持ちグローバルに展開するSAPと、SuccessFactorsのクラウドDNAと専門知識、人間中心の設計などが組み合わさることで、「美しいユーザーエクスペリエンス、リアルタイムの予測分析、クラウドがもたらすコスト減」(Dalgaard氏)などのメリットを提供するという。
Dalgaard氏が示したSAPの新しいクラウド戦略のカギを握るのが、プラットフォームアプローチによる疎結合、そして統合基幹業務システム(ERP)と一貫性のある形での統合だ。
これまでのクラウドでは財務や物流、コアの人材管理(HR)と段階を経て導入していたが、「採用」と「売り上げ」、「才能管理」と「調達」など「顧客は必要なものを選んで疎結合した状態で導入できる」(Dalgaard氏)という。もちろん、ERPなどバックエンドシステムと統合できる。これらサービスコンポーネントをプラットフォームを利用して消費しやすくするという。