組織のライフサイクル--再び学生に人気のマイクロソフト

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2012-06-19 11:00

 ロイターによると、今Microsoftはインターンの学生にとっても人気なのだそうである。記事によれば、Microsoftのインターン人気、そして就職先としての人気は、Googleに並ぶか肉薄している。

 今や成熟企業のイメージの強いMicrosoftであるが、その人気の源はどこにあるのだろう。

原点に帰るMicrosoft

 Microsoftのインターンは、月6000ドルという高額報酬で、期間は12週間。この待遇の良さも人気の一因かもしれないが、今のMicrosoftでは「革新的発想」を重んじる「文化的変革」が起きつつあるのだという。記事によれば、Microsoftは「1990年代の全盛期を彷彿とさせる」情熱を取り戻しつつある。

 しかし、「原点に帰る」と言うは易しいが、一度成長した企業が原点に帰ることは容易ではない。以前とは異なる競争環境、革新より安定を求める社員、既存の顧客への継続的サポート、株主からの収益向上へのプレッシャー。複雑に絡み合うステークホルダーの意向に応えつつ、かつての状況に戻ることは、何かを犠牲にすることでもある。

企業のライフサイクルマネジメント

 もしかすると、企業の持続的成長において最も重要なのは、戦略やビジネスモデルではなく、企業のライフサイクルマネジメントであるのかもしれない。事業を立ち上げる、あるいは新しいビジネスモデルで市場を席巻する、というのも一つの重要な能力であるが、それを遂行する企業体を持続的に成長させることは別の能力である。

 企業は、創業期から、成長期、成熟期、そして衰退期へとステージを登ってゆく。そして、各ステージにおいて求められる能力と課題は変化する。

 例えば、創業期であれば限られたリソースの中でビジネスを立ち上げるための創造力が重要であり、その困難を乗り越えるための強いリーダーシップが経営陣には求められる。一方、成長期になれば、社内の仕組みを整備することが必要となる一方、いかに組織の硬直化を防ぐかが課題となる。

持続的成長のマネジメント

 しかし、最も困難を伴うのは、成熟期に入った企業が、持続的成長を維持することだろう。この点においては、Microsoftは、GoogleやFacebookよりも難易度の高い課題に直面していると言える。成熟期にある組織を活性化させるには、組織を小さい単位に分解する、事業の取捨選択を行う、マネジメントを入れ替える、など取り得る選択肢は様々であるが、成功の方程式がある訳ではない。

 Microsoftの中で、何が起きているのかは判らない。それでも、Microsoftでは「上層部がかつてのような革新的発想を重んじるようになった」と言う。

 もし、これがMicrosoftを革新的企業のポジションに再度押し上げるならば、企業としての持続的成長力の観点ではネット系の新興企業を明らかに上回る信頼を勝ち得るだろう。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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