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三国大洋のスクラップブック

ジャック・ドーシー、世界制覇の野望 - (page 3)

三国大洋

2012-08-22 16:44

ユーザーエクスペリエンスで勝ち抜く

 ジャック・ドーシーのスクウェアに関する話のなかで再三登場してくるのは、「ユーザーエクスペリエンス(体験)」と「デザイン」という言葉である。

 スティーブン・レヴィの記事には、「支払いという行為を、親密な(=人間同士の血の通った)経験に変えるのがスクウェアの使命」とか、「スクウェアが目指しているのは、買い物客に感情的に満足のいく経験を提供すること」といった一節が見られる。

 また、昨年「スクウェア・レジスター」が発表された時に掲載されたFast Companyの記事にも、次のような記述がみられる(註17)。

「ドーシーは、POSシステムの代わりとなるものを提供することには関心がない。彼がやりたいと考えているのは、支払いに関わる経験全体を作り替える、もっと簡単にできるようにすること … スクウェアCOOのキース・ラボイスの言葉を借りれば『もっと楽しいもの』にすることである」

「『値引きを欲している人ばかりではないと思う。素晴らしい経験こそ、みんなが求めているもの』とドーシーは言う。そして、その点にこそ決済分野で成功する大きなチャンスが眠っている、とスクウェアは信じている」

「『(ユーザーエクスペリエンスという視点から)決済システムのデザイン(=設計)についてたっぷりと考えたことのある金融機関は、そう多くはないと思う。デザインというのは単に見た目の問題じゃない。それは、いかにして対象をシンプルにし、その本質まで突き詰めていくか、ということ』とドーシーはいう」

 一方、Fortuneの記事には、スクウェア・レジスターを導入したニューヨークのカフェの顧客体験について、ドーシーが次のように語っている部分がある(註18)。

「『技術自体は完全に視界から消えてなくなる』というのが自分にとっての技術の最高の形。技術が邪魔をしなくなれば、買い手と売り手が人間として触れあう余地も広がる。かつて自分たちの曾祖父母がやっていたように、街角のよろず屋に行って何かを買ったら、あとは『ツケにしておいて』といって店を出てくる、といったことができるようになる。要は、自分が欲しいと思うものとその値段に注意するだけでよくなるということ。支払いに関わるわずらわしさは消えてなくなる」

 この記事の結びの部分には、ドーシーが、自分の予想を上回るペースでスクウェアの導入が進んでいるとした上で、その原因について「皆が生活のすべての面で、これまでよりハイタッチな経験を望むようになっているから」と分析している箇所もある(註19)。

 最後に。TwitterとSquareという一見関係なさそうな2つのシステムも、ドーシー本人にとっては「人間同士のコミュニケーション」という同じコインの裏表に過ぎないようだ(媒介となるのが140文字の言葉か、商取引かという違いだけ)。Vanity Fairの記事には、「この世界で起こっているすべての事柄をリアルタイムで示し、そのデータをすぐに入手できるようにすることが自分の役割」というドーシーの考えが記されている(註20)。

 まったく、面白い発想をする人間がいるものである。

追記:スクウェア、定額制料金プラン発表

 スタバとの提携発表の余波も収まらない8月16日(米国時間)、スクウェアが1カ月275ドルという定額性の料金プランを発表してきた。

Square、小規模事業向け固定月額料金プランを発表 - CNET

 年間の決済額が25万ドルまでという上限付きだが、この額に近い利用金額(一カ月あたり2万ドル以上)だと、サービス加入者は2.75%の約半分程度——実質1.32%まで手数料を引き下げることが可能になるとAllThingsD(ATD)は書いている。すでに述べたとおり、カード決済手数料が家賃、人件費に次いで大きな負担となっているような事業者の目には、たいそう魅力的な選択肢と映るかも知れない。

Square Offers Flat Monthly Fee for Processing Credit Cards - ATD

 「カード決済の民主化」を狙って、これまでは専ら個人事業者やそれに類する規模の個人商店などを相手に加入者を増やしてきたスクウェアだが、この定額制プランは、それよりひとつ上の規模の事業者を狙ったものと思える。同時に、Business Insiderでは、スクウェアが一部は赤字覚悟で加入者拡大に乗り出した——年間決済金額が1軒あたり18万ドル以上の場合は同社の持ち出しになると試算——という見方を示しているが、実際にビザとの契約がどうなるのかなど、はっきりしたことはわからない。

Is Square Going To Lose Money With Its New Pricing Plan? - Business Insider

 なおATDの記事には、「全米にはまだクレジットカード払いを受け付けていない事業者がざっと2600万件も残っている」というスクウェアのキース・ルボイスCOOのコメントが出ている。スクウェアのビジョン実現に向けた歩みはまだ最初の一歩目か、二歩目といったところなのかもしれない。

(敬称略)

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註17:Fast Companyの記事

… Dorsey wasn't interested in simply providing a direct replacement for existing point-of-sale systems. He wanted to revamp the entire payments experience—making it simpler and, as COO Keith Rabois puts it to Fast Company, "more delightful."

"I don't think people are necessarily want discounts," he says. "They just want great experiences." And that, Square believes, is where the real opportunity lies in the payments industry.

"I don't think a lot of financial institutions have spent a lot of time thinking about design," Dorsey says. "Design is not visual. It's about simplifying and getting something down to its essence."

How Jack Dorsey's Square Is Accidentally Disrupting The Entire Payments Industry - Fast Company


註18:スクウェア・レジスターを導入したカフェの顧客体験

To me that is the pinnacle of technology -- when the technology disappears completely," he says. And with technology out of the way, he adds, there's room for a more personal interaction between buyer and seller, one that harks back to a quainter time, when our great-grandparents walked into the general store, picked up a shovel, and walked out after telling the owner to write the purchase on his ledger. "You just have to focus on what you want and how much it is," Dorsey says. "All the mechanics of payments fade away."

The Death of Cash - Fortune


註19:ドーシー自身によるスクウェアの分析

Adoption of the technology, he says, is happening faster than he expected because people are yearning for a more high-touch experience in all aspects of their lives, including at the checkout counter. "I think there is a general desire in American culture right now to find something that is more crafted, that is more personal," he says.

The Death of Cash - Fortune


註20:(おそらく)ドーシーの哲学

"My role as an observer and as a technologist is to show everything that's happening in the world in real time and get us to that data immediately, so we can change our lives even faster, with better knowledge."

Twitter Was Act One - Vanity Fair

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