日本マイクロソフトが9月27日に開催した「The Microsoft Conference 2012」では、「Special Keynote」として米マイクロソフト バイスプレジデントでサーバ&ツールマーケティンググループの沼本健氏が「Windows Server 2012が実現する、ハイブリッドクラウドの全貌」と題した講演を行った。
リリースされたばかりのWindows Server 2012はマイクロソフトが新たに掲げたコンセプト「クラウドOS」を具現化した製品。マイクロソフトは新コンセプトで何を目指したのか。
米マイクロソフト バイスプレジデントでサーバ&ツールマーケティンググループの沼本健氏
「Windows Server 2012は高い評価を得ている製品だが、それ以上にクラウドOSの幕開けを告げる戦略的商品だ」
キーノートの冒頭、沼本氏は力強くこう宣言した。
クラウドOSとは具体的な製品ではなく、クラウド時代のサーバ製品のビジョンである。Windows Server 2012をはじめSQL Server 2012、System Center 2012などプライベートクラウド構築に必要なサーバ製品群とVisual Studioのような開発ツール、マイクロソフトが提供するクラウドサービス「Windows Azure」を含めた包括的なビジョンであり、データセンターのさらなる進化、新しいアプリケーションへの対応、あらゆるデータを分析可能とし、使いやすいITを実現する。
なぜクラウドOSという新しいビジョンが必要になったのか。それはサーバを取り巻く環境の4つの大きな変化に起因している。
サーバを取り巻く環境の変化を説明した
1つ目はデバイスの多様化だ。「ネットワーク接続が前提となっているデバイスの数は、すでに地球に存在する人類1人1台ペースとなっているそうだ。この数はさらに増え続け、2、3年で倍になるといわれている。コンシューマライゼーションといわれる、エンドユーザー起点のデバイス多様化に対応しなければならないことが、クラウドOSが必要となっている1つ目の要因だ」
2つ目の要因はソーシャルの広がりと新しいアプリケーションの台頭だ。「もはやユーザーにとってはネットワーク接続が大前提で、いいね!シェアリングといった機能は存在して当たり前のものになりつつある」
三つ目の要因はデータの爆発的増加である。「現在のデータ量はさらに増え続け、ストレージ単価下落のスピードをデータ増加スピードが上回っている。さらに、非構造データを含めてこれだけ増えたデータをどうビジネスに役立たせるのかが大きな課題となっている」
四つ目の要因はクラウドそのものへの関心の高まりだ。もはやクラウドが企業のITシステムには欠かせないものとなりつつある。
「マイクロソフトとしてはこれら個々のトレンドに対応すると共に、データセンターのOSの役割を再定義する必要が出てきた。昔のサーバOSは1ノードごとに考えていたが、今後は1箇所のデータセンターを1台のサーバとして考える必要があるだろう。このビジョン実現に向け考えられたのがクラウドOSだ」
沼本氏はマイクロソフトの強みを、クライアントからデータセンターを管理する製品まで包括的な製品群を持っていることに加え、「Office365」「bing」「Xbox LIVE」のようなサービスを提供した経験だと指摘。サービスを運営して得たノウハウもWindows Server、Windows Azureに反映されているという。
日本マイクロソフトの業務執行役員 サーバプラットフォームビジネス本部の梅田成二氏
そして提供が開始されたばかりのWindows Server 2012の具体的な機能を、日本マイクロソフトの業務執行役員 サーバプラットフォームビジネス本部の梅田成二氏が紹介した。
「Windows Server 2012は180以上の新機能を実装しているが、特に関心の高い機能強化ポイントは包括的な仮想化、クラウド連携、Windows 8連携、事業継続オプションの4点となる」
包括的な仮想化としては「Hyper-Vのスペック向上/高速化」、「ストレージの仮想化と重複除去」、クラウド連携としては「オンプレミスとクラウドの連携」、Windows 8との連携としては「RDP 8.0の高速化」、事業継続オプションとして「Hyper-V レプリカ」、「Microsoft オンラインバックアップサービス」が紹介された。
続けてWindows Server 2012によるデータセンターのさらなる進化を具現化する先行導入ユーザーとして三井物産とJR東日本情報システムが、新しいアプリケーションへの対応としてソーシャルゲームを提供するgloopsが、使いやすいITの実現として東京海上日動の事例が紹介された。
Windows Server 2012は200以上のサーバがCertifiedロゴを取得済みで、260以上のアプリケーションが年内に提供を予定し、130以上のSIソリューションが年内に提供を予定されているという。
沼本氏はあらためて、「クラウドOS時代の幕開けとなるのがWindows Server 2012であるということをぜひ体感してもらいたい」と訴え、キーノートを締めくくった。