リアルタイムかつパーソナライズされた販促を--SAP Precision Retailing

冨田秀継 (編集部) 2012年10月23日 22時05分

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 SAPジャパンは10月23日、販促支援の新製品「SAP Precision Retailing」の国内提供を発表した。インメモリデータベース「SAP HANA」を基盤にした製品。個々の顧客のスマートフォンアプリにリアルタイムかつパーソナライズされた情報を瞬時に配信する仕組みを持つ。

 Precision Retailingは、その名の通り、小売業の高精細な販促を支援する製品だ。システム面では、HANAをクラウド環境で利用できる「SAP HANA Cloud」が前日に発表されたが、この中のPaaS「SAP NetWeaver Cloud」上で提供されることになる。

 店舗側の利用シナリオとしては、スマートフォン向けのアプリケーションを開発し、リアルタイムの情報配信サービス基盤としてPrecision Retailingを活用。商品情報や顧客情報、さらには位置情報を掛け合わせて消費者に情報を配信していく。ユーザー側は、買い忘れを防ぐための「買い物リスト」としての利用、家族間でのリスト共有、各種ポイントプログラムへの参加などを動機として、店舗のアプリケーションを利用するだろう。

 Precision Retailingの特徴は、顧客それぞれの嗜好に合った情報を、その時々の顧客の行動を踏まえてリアルタイムにスマートフォンへと情報を差し込んでいく点にある。小売りでの利用イメージは、SAPが公開しているビデオが参考になる。

 このビデオをもとに、Precision Retailingがどのように機能しているのかを時系列で紹介すると、

  • バイクで来店した女性がiPhoneアプリを使ってチョコレートチップクッキーの看板を撮影する。アプリが商品を認識したので、女性はクッキーを買い物リストに追加する。
  • 車で来店した男性は買い物リストとしてアプリを利用している。リストに入っているアスパラガスを手に取り、チェックした後で商品をカゴに入れている。
  • 女性が桃をチェックしたところ「オーガニック派」のバッジを入手した。このバッジの保有者は次回、オーガニック関連製品が10%オフになるという特典がある。ゲーミフィケーションの応用例と言える。
  • 男性がアプリでワインのバーコードを読み込むと、商品情報とともに「お店からのオススメ」が表示される。オススメをクリックすると「これも好きかも」と別の商品がレコメンドされる。最初のワインは12.99ドルだったが、レコメンドされた商品は22.99ドル。男性は後者をカゴに入れる。店舗にとってはアップセルが成功した瞬間だ。
  • 買い物リストに10.99ドルの食肉を表示させた男性。商品情報に「お買い得品」のタブを見つけ、5.99ドルの割安な食肉を購入することにした。
  • 男性へのオススメ商品の中にカモミールティーが表示される。商品情報には「(この商品に)よく合う」という蜂蜜が表示される。男性は両方を購入することにした。店舗はクロスセルに成功したことになる。
  • 女性は冒頭で撮影したチョコレートチップクッキーを購入した。
  • 男性はレジで会員コードを表示してスキャンしてもらう。これによって、今回の行動(チェックなど)と実際の購買の履歴が紐付くことになる。
  • 男性のアプリには、今回の買い物で節約できた金額が23.45ドルであり、入手したポイントが70ポイントであることが表示される。この画面から男性の名前はSteveであることも分かる。

と、このような流れになる。現在のGPSの精度では、店舗に入った瞬間にチラシを配るのは当たり前にできるが、店内でも肉や野菜、お酒の棚を判別できるようになっているという。こうして地理情報も組み合わせて販促活動を実施することも可能だ。

 先行ユーザーにはフランス大手食品チェーンのカシーノと化粧品大手のロレアルの2社がいるという。

  • Precision Retailingのキーワードは、パーソナライズ、リアルタイム、販促

  • 爆発的に普及するスマートフォンを起点に消費者とつながる

馬場渉氏
馬場渉氏

 SAPジャパン リアルタイムコンピューティング事業本部長の馬場渉氏は「HANAでなければ作れなかった類のソリューションだ」と述べる。それというのも、多数の顧客情報を持ちながら、膨大な商品情報を駆使して、リアルタイムに情報を提供していく必要があるからだ。消費者の行動を瞬時に把握するのは当然できる。これをさらに進め、SAPは顧客と共同で消費者の行動を察知したら瞬時にフィードバックを返したいというニーズを創出した。その実現のために、インメモリデータベースとクラウドを組み合わせたPrecision Retailingを開発している。

「Precision Retailingは、消費者が商品を手に取った瞬間、買った瞬間、悩んでいる瞬間の行動をとらえる。ECサイトでのクリックは、購買かもしれないし検討かもしれない、あるいは比較かもしれないが、その都度表示させるものが変わる。Precision Retailingは、それを実体験で提供する」(馬場氏)

 また、販促活動はどうしても店舗側の意向が働き過ぎるあまり、消費者が置き去りになってしまう懸念がある。消費者が販促アプリを利用する動機は、買い物リストの共有やポイントプログラムへの参加だけでは弱い可能性があるだろう。この点について馬場氏は「“買い物するのにこんな面倒なことを……”と思う人が、一日に何度もFacebookに投稿したりもするだろう。消費者は意外にも(自分が買った物や獲得したバッジなどを)シェアしたいという欲望があるのではないか。そうした消費者行動を前提としたソリューションともいえる」とコメント。主役はITやバックエンドのシステムではなく、あくまでも顧客接点であることを訴えていた。

 また、馬場氏はPrecision Retailingと旧来の販促手法を比較して、マスからパーソナライズへ、数週間〜数カ月ではなくリアルタイムで、陳列の組み替えではなくコンシェルジュのようにリアルタイムで働きかける販促だと整理して見せた。

  • 小売のユースケース

  • ガソリンスタンドのユースケース

  • 飲食店のユースケース

 SAPにとっては、B2B2Cの取り組みとなる。同様の仕組みを持った製品も開発を進めており、間もなく市場に投入される製品も控えているという。扱う分野はスポーツ観戦の体験を変えるような製品と、ゲーム向けの「Precision Gaming」だとした。

 Precision Retailingの価格は非公開だが、馬場氏は「初期投資は必要ない。従量課金ですぐに始めることができる。ECサイトとは異なり、実店舗に設備投資することなく、実験店舗ですぐに始めることができる」と述べている。また、課金の対象となるのは「消費者のアクティブユーザー数。アプリをダウンロードして使っている人が何人かで決まる。また、ユーザーに(販促の)働きかけをするが、そのトランザクションやエンゲージメントの数で(価格が)決まってくる」ことも明らかにした。

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