NECなど4社は11月27日、温度差を利用した自然換気で空調エネルギーを大幅に削減できるという「高効率省エネ型データセンタモジュール」を開発したと発表した。従来に比べて年間で約60%の空調エネルギー削減、データセンター全体で約20~30%のエネルギーを削減できるという。
開発したモジュールは、通常のコンテナ型データセンターで利用する輸送用コンテナを組み合わせて利用できるサイズにしている。モジュール内に一列に並べたラックの吸気側のモジュール側面下部に外気を取り入れる外気流入口、外気流入口と反対側のモジュール側面上部にラックからの排気の流出口を付けている。
開発したモジュールの構造
流入口から取り入れた外気とサーバの排熱を駆動力として利用し、モジュール内での煙突効果を高めるよう排熱促進機構を設置することで、換気用のファンを使わない自然換気システムを構成して、サーバ室内の冷却と排熱が可能と説明。奥行き6.0mのモジュールでは、1ラックあたり8kWまでのラックを6ラック設置できるという。
開発した自然換気システムでの外気利用の可能性を評価するため、日本各地の年間の気候データを使って、米暖房冷凍空調学会(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers:ASHRAE)の推奨温湿度範囲を満たせるかどうか評価している。既存の多くのデータセンターで使われているASHRAEの推奨温湿度範囲(2004年版)を適用すると、日本のほとんどの地域で外気を利用できる期間はわずかだった。
だが、改定されたASHRAEの推奨温湿度範囲(2011年版Class A1)を適用すると、東京で年間26%、札幌で年間14%の期間で外気を利用できるようになる。寒冷期に換気取込量を調整することで、外気を利用できる期間を東京で年間65%、札幌で年間62%まで拡大させることが期待できるという。
年間の空調エネルギーを試算すると、換気用のファンを使わない自然換気システムを活用して換気取込量を調節する場合、従来のASHRAE(2004年版)の推奨温湿度範囲を満たすように空調システムを活用する場合に比べ、東京で約64%のエネルギーを削減できることが明らかになったと説明している。換気用のファンを活用する機械換気を組み合わせることで東京で約70%、札幌で68%の期間で外気を利用できるようになり、空調エネルギーをさらに削減できるとしている。
今回のモジュールでは、NECがIT機器の製造、東洋熱工業が空調エンジニアリング、NECフィールディングとNSKがコンテナ型データセンターを担当。サーバの動作情報や運用形態、サーバ室内の空気の流れや温度分布の変動メカニズムを明らかにすることで、IT機器と空調の両方の特性や要求を融合したとしている。今後は引き続き省電力化に取り組み、2013年度内の完成を目指す。