さまざまな既得権益を破壊してきた孫正義
米国時間11月23日、感謝祭の祝日につづく連休の最中に「孫正義の新たな挑戦」というタイトルがオンライン版『Wall Street Journal』(WSJ)の一面に見えた。
原題は「Masayoshi Son's New Challenge」、別に用意された長めのタイトルは「Japan's Masayoshi Son Picks a Fight With U.S. Phone Giants」となっていた。
「年に一度の大売り出し」を狙う小売業を例外として、感謝祭では企業活動がスローダウンする。報道機関でさえ出稿量が目に見えて減る時期とはいえ、たいした扱いである。その前の週には『週刊東洋経済』が孫本人の長いインタビュー記事を含む特集を組んでもいた。
WSJでも東洋経済でも、いちばん肝心な手の内——今後具体的にどういう施策を繰り出していこうと考えているのかという点は明かされていないが、時期を同じくしてインタビューに対応した姿勢からは、10月半ばに発表したスプリントの買収計画をめぐる騒ぎが一段落し、ソフトバンクがこの件に関して次のフェイズに進み始めた、と見ることもできる。
この買収をめぐっては、多くのメディアがさまざまな切り口で分析した記事を掲載している。今になって屋上屋を重ねるつもりもないのだが、ただし、まだよく伝わっていないのではないかと前から思っていたことが一つある。
それは、ソフトバンクが飛び込む米携帯通信市場の状況だ。今後、ソフトバンクのスプリント買収に関連するニュースを見ていく上でも、ある種の注目点として参考になるだろう。
今回は、この世界有数の大市場をめぐる話の落ち穂拾いを試みる。
巨大二強の寡占化が進むなかで
米携帯市場は、ベライゾン・ワイアレス(以下、ベライゾン)とAT&Tによる二強寡占の傾向が進むとともに、携帯通信料金が高止まり(もしくは増加)している。この点については、10月の買収計画を発表する会見でも言及があったかと思う。
この状況を知る上で参考になるグラフが『Fierce Wireless』という業界紙のウェブサイトに掲載されているのを見つけた。11月26日付で公開された「Grading the top 10 U.S. carriers in the third quarter of 2012」という記事には、4つのグラフと1つの表が載っている。