本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今週は、富士通の豊木則行 執行役員常務と、日本ユニシスの黒川茂 代表取締役社長の発言を紹介する。
「富士通とOracleの技術を結集し、UNIXサーバ市場で先行するIBMを打ち負かしてトップシェアを獲りたい」
(富士通 豊木則行 執行役員常務)

富士通の豊木則行 執行役員常務
富士通が1月18日、ミッションクリティカル用途向けUNIXサーバ製品のラインナップを刷新し、新たに「SPARC M10」製品群を発表した。同社でシステムプロダクトビジネス部門長を務める豊木氏の冒頭の発言は、その発表会見で、新製品が米Oracleとの協業に基づくものであることから、両社のパートナーシップによる強力な事業推進への決意を表したものである。
豊木氏の説明によると、SPARC M10はミッションクリティカルなシステムに求められる高い信頼性に加え、膨大なデータを迅速に処理する高い処理性能、飛躍的に増大するデータに対応できる柔軟な拡張性を備えており、顧客ビジネスの迅速な経営判断を支援するとしている。
同製品は、昨年10月に米国で行われたOracle OpenWorldで、豊木氏自身が開発への取り組みを明らかにしていた経緯があり、従来の「SPARC Enterprise Mシリーズ」の後継として、富士通とOracleの協業関係を象徴するものである。製品の詳細な内容については、すでに報道されているので関連記事等をご覧いただくとして、ここでは両社の協業関係に注目したい。
豊木氏によると、今回の新製品をはじめとしたUNIXサーバの展開における両社の協業については、「UNIX最大の顧客ベースを支える責任と顧客資産の保護」「コア技術の開発への継続投資」「開発協業によるハードウェアとソフトウェアの技術の融合」の3点がキーポイントになっている。同氏の冒頭の発言は、これらをベースにした事業推進への決意表明といえる。
ただ、今回の発表については、富士通主導で新製品開発を進めたことから、国内向けを先行したという。グローバルの販売展開については現在、Oracleと調整を進めているとしており、近々発表される見通しだ。
会見の質疑応答では、富士通が開発を主導したこともあって「Oracleはこの新製品の販売展開に本当にしっかりとコミットしているのか」との質問も飛んだ。これに対し、豊木氏は「この件については、両社のトップ同士でお互いにしっかりとコミットしている。両社でトップシェアを獲りに行くという思いは完全に一致している」と語気を強めて答えた。
富士通とOracleのパートナーシップは、今後グローバルなエンタープライズ市場で一大勢力を形成していくことを考えた場合、もっと幅を広げられるポテンシャルがあるのではないか、との見方もある。今回のSPARC M10が、そうした動きのきっかけになるかどうか注目しておきたい。