この報道を受けて、アマゾン側からは独現地法人の広報担当から「実態調査を行う」「当該の警備会社とは直接契約していない」「アマゾンは差別や恫喝を許容しない」などとするコメントが出されている。
要は、アマゾン側の管理体制の手落ち(監督不行届)で、知らないうちに筋の良くない下請けが入り込み、また(同社の知らないところで)なすすべもない外国人労働者のピンハネが行われていた、といったところかもしれない。もしアマゾン側が「知りながら、放置していた」となれば、それこそスキャンダルだろう。
ARDによる実態告発が単独での動きなのか、それとも何かもっと大きな流れのなかで出てきたものなのか——それを判断する材料は、現時点ではない。前回の記事で触れたアマゾン英配送センターの実態に関するFinancial Times(FT)の報道については、Telegraphが記事の最後で触れているが、ドイツでの法人税支払いに関連する事柄などはまだ目にしていない。
それでも、何年も前から「同配送センターでの問題に関する苦情が出ていた」という組合関係者のコメントもあるから、なぜこのタイミングでこうした報道が出たのか、あるいは今までなぜ出なかったのか、といった部分に疑問は残る。
なお、NYTによるとドイツはアマゾンにとって米国の次に大きな市場で、2012年の売上は87億ドル(全体の年間売上が610億ドルだからざっと14〜15%)。また、Telegraphではアマゾンのドイツ国内における正規雇用者が約7700人で、そのほかに臨時雇いが数千〜数万人程度、などと記している。
極右の代名詞的ブランド
ARDの報道で、良くも悪しくも「うまいところを付いたものだ」と思うのは、ネオナチという要素を引っ張り出したことだ。
問題となっている警備会社の名前が「HESS Security」で、「ナチスの副総統ルドルフ・ヘス(Rudolf Hess)を想起させる」というのは、いささかこじつけが過ぎると感じられなくもない。だが、撮影されたショートモヒカンの連中が身に付ける「Thor Steinar」というブランドの洋服が、ドイツでは極右の代名詞的存在となっており、ネオナチとの連想を理由にブンデスリーガ(フットボール)の試合会場や連邦議会の建物内では着用を禁じられている——などと聞けば、ドイツのアマゾンユーザーとしても自国の歴史を思い出さないわけにはいかないだろう。
そんな面を意識してか、NYTはドイツの労働組合関係者の口から「かつてフェンスで囲まれた休暇用キャンプに留め置かれ、警備員から監視されていたポーランド人労働者について話している」というコメントを引き出している。コメントの人物は、映像にも登場する「Heiner Reimann」という名の労働組合関係者だ。