YouTubeでアメリカンドリームをつかんだフィリピン人
米国の代表的なロックバンド、Journeyがヴォーカリストの脱退により活動できなくなっていた中、メンバーがYouTubeにアップされていた元路上生活者のフィリピン人ヴォーカリストを見つけオーディションを行い、最終的には彼が世界で活躍するリード・ヴォーカリストとなりました。
この話はドキュメンタリー映画になり、YouTubeでつかんだアメリカンドリームとして世界で脚光を浴びました。個人の表現として音楽やパフォーマンスをアップロードすることで、リアルな世界ではあり得ない人とつながり、チャンスをつかむことができるかもしれない。そんな可能性もYouTubeは示しています。
個人発信の情報は限界知らず
個人コンテンツの配信はYouTubeの重要な機能の一つです。赤ちゃんのかわいい動画から、ドッキリ動画、家族の失敗動画といった面白系だけではなく、プロ顔負けの芸術性の高い動画、事故現場の動画の配信といったシリアスなものまで、個人コンテンツは発想に限界がありません。
現在テレビ局、映画業界は既存のコンテンツを売る手段として、動画配信サービスをどちらかというとマーケティング目的に活用しようとしています。しかし、個人が発信する情報はまさにコンテンツそのものに可能性があり、個人コンテンツの活用は今後のビジネスを考える上で重要なポイントになってくるでしょう。テレビニュースの事故現場のレポートが一般の人からのレポート動画で埋め尽くされたり、劇場で観る映画が全部個人からの投稿で制作されたりする日が、もしかすると来るかもしれないのです。
次回は現代のメディア・デモクラシーを語る上では欠かせない重要なテーマであるレコメンデーション、そしてデータサイエンティストについて話したいと思います。
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- エリック松永(Eric Matsunaga)
- プライスウォーターハウスクーパース株式会社 エンターテイメント&メディア リードパートナー
- バークリー音学院出身のプロミュージシャンという異色の経歴を持つアーティストであり、放送から音楽、映画、ゲーム、広告、スマホまで、幅広くメディア業界の未来をリードする人気メディア戦略コンサルタント。アクセンチュア、野村総合研究所、デロイトトーマツコンサルティンクグメディアセクター APAC統括パートナーを経て、現職。主な著書:『クラウドコンピューティングの幻想』(技術評論社)、『イノべーション手法50 -デフレ時代を勝ち抜く経営術-』日経BPムック。GQでも連載を掲載中。その他、メディア系専門誌、ウェブメディアに執筆多数。多方面での講演も話題になっている。