動画は共有して楽しむ時代
動画ソフトを楽しむシーンに大きな変化を起こしたのはインターネットの登場でした。インターネットは視聴環境のある部屋で友人ら不特定多数の人々をネット経由で情報と情報でつなぐ環境を提供しました。その結果、動画を楽しんだ人は自分の感動を人に伝えたくなり、感想や批評をインターネットの自分のホームページやブログに発表するようになりました。さらにソーシャルネットワーク(SNS)の登場によって、その情報を発表するだけではなく意見交換をすることによって情報を共有する文化が生まれました。
その中で、自分の面白いと思った映画や音楽ビデオを文字情報だけではなく動画そのもので共有し、感動を分かち合いたいと思うのは自然の流れでしょう。
そこで、2006年に登場したのがインターネット上で動画を共有できるYouTubeです。YouTubeは特別なソフトウェアをダウンロードしたり、難しい設定をしたりする必要がなく、ブラウザだけで動画を投稿し、友人と共有して視聴できるサービスです。
インターネットでの配信ビジネスに関しては著作権との戦いの歴史と言っても過言ではありませんが、YouTubeのサービス開始当時、わたしも大好きな米国の人気コメディー番組『Saturday Night Live』や、さまざまな著作権者を無視した投稿が無許諾でアップロードされたことによって、YouTubeの便利さや可能性を多くの人が感じたのは事実でしょう。著作権絡みの話題については、この回では触れずに、ここではYouTubeの登場によってテレビ、映画といったコンテンツにどんな影響があったのかについてお話しましょう。
大手テレビ局も動画配信に動き出した
テレビ業界は、インターネットの動画配信に対して当初より敵対の姿勢をとってきました。テレビ業界の強い働きかけもあり、インターネット上での配信に関する規定は強化され、2010年施行の改正著作権法ではアップロードだけではなくダウンロードについても違法化が規定されました。
実際、日本でも違法アップロードによる逮捕者も出ており、負のイメージも強いのですが、ただ非難するだけではなく積極的に(もちろん合法的に)活用する動きが出てきました。テレビ業界は著作権保護の活動の中でインターネット視聴への動きが無視できないレベルになってきたことを実感し、インターネット上での可能性を模索し始めたのです。特に注目すべきは大手テレビ局の動きで、業界に大きな影響を及ぼしました。2006年に、米国3大ネットのCBSが、なんと敵対していたYouTubeとの連携を発表し、番組コンテンツをアップロードし無料動画配信を開始したのです。
CBSのトップは、「YouTubeの動画配信によって、テレビを見ない新しいタイプの視聴者と既存メディア事業者が作成する高品質のコンテンツが新たなテレビ視聴者を生み出した」と発言しています。
YouTubeとの連携によって、YouTubeでの無料動画からCBS本体の視聴に誘導し、視聴率が向上したと発表しているのです。ちなみにYouTubeへの配信が開始されてからCBSの番組“Late Show with David Letterman” は5% “The Late Late Show with Craig Ferguson” は7%の視聴率アップとなったと発表しています。YouTubeのCBSチャンネルでは、日本時間4月8日13時の時点で10億2609万2264回の動画再生が行われていました。このような取り組みの結果、YouTubeは2010年に黒字化を果たし、2013年3月には月間ユニークーユーザー数が10億人に達するまでになりました。
また、英国BBCは7日間のテレビとラジオの見逃しを無料で視聴できる見逃し視聴サービス「iPlayer」を開始し、やはり成果を収めています。
※クリックすると拡大画像が見られます