エリック松永のメディア・デモクラシー講座

音楽とは違う--動画ビジネスをリードするのは個人ユーザー

松永 エリック・匡史(プライスウォーターハウスクーパース)

2013-04-13 10:00

 前回はこちら。「デジタルメディア革命」は音楽から始まった」

動画はダビング文化ではない

 音楽は、ラジオのエアーチェック時代から、レコードのカセットテープへのコピー、オリジナルテープの編集とコピーとダビングが活発に行われることによって共有されてきました。

 1980年に「黎紅堂」(れいこうどう)によって開始されたレコードレンタルビジネスは、レコードのカセットテープへのコピーが大前提のものでした。このビジネスは当時の著作権法に貸与権が明文化されていなかった盲点をついたもので問題はありましたが、レコードを借りてテープにダビングして楽しむというダビング文化を浸透させるのには大きく貢献しました。(最終的には日本レコードレンタル商業組合と日本音楽著作権協会で貸与権が設定)

 一方、映画とそのほか動画ソフトに関しては、ビデオ再生機器、ビデオソフトともに高価で一般には手の届かないものでした。しかし、レコード業界とレンタルレコード店の騒動が決着したタイミングで映画ビデオのレンタルが始まり、手ごろな価格でレンタルビデオを見るためにビデオテープレコーダを購入する利点が十分あると評価された結果、受け入れられ、ビデオテープレコーダの売り上げは急激に伸びました。

 しかし、ダビング用にもう一台購入するにはビデオテープレコーダが高価だっただけではなく、ビデオテープも高額なうえ、ダビングによる動画の劣化も激しく、さらにはビデオデッキへのテープの巻き込みなどのトラブルも多いという点で、音楽のようにはダビングという発想が生まれませんでした。その後はコピーガードがかかり著作権のあるソフトについてはダビングさえできないようになりました。

 テープからデジタルデータであるDVDのレンタルに時代が移った時も、コピーガードがかかっていたため、違法なソフトウェアでのコピー解除が可能だったものの、操作や設定が難しいこともあり、DVDソフトではダビングはあまり浸透しませんでした。

 海外では違法で安価な海賊版ビデオへと触手が伸びていましたが、「まじめな」日本人にはあまり浸透しません。ライフスタイルとして、会社帰りにビデオレンタル屋にふらっと立ち寄って好きなビデオを借り、リラックスしながら自宅で楽しむ「カウチポテト族」が登場。ビデオは個人で楽しむメディアとして確立されていったのです。

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