三国大洋のスクラップブック

GALAXY S4の米国投入でつまずいたサムスン

三国大洋

2013-05-02 11:30

 先週はSamsungにとって良いニュースと、あまりありがたくないニュースの両方が報じられていた。

 良いニュースの方は第1四半期の決算が過去最高をまたも更新したというもので、純利益は71.5兆ウォン(約64億ドル)と、1年前の50.5兆ウォンだけでなく前四半期の70.4兆ウォンをも上回ったという。

 年末商戦期を含む10~12月期の利益をも上回ったというのは、大したものとしかいいようがない。また稼ぎ頭のスマートフォンについても推定出荷台数が7000万台前後(調査会社によって多少ばらつきがある)となり、3700万台超にとどまったAppleの倍近くに達したことも各所で話題になっていた。

 営業利益ベースでは、この通信端末と通信機器の部門が全体の約4分の3を占めたというから、ライバルのAppleと同じようにどんどん「モバイル端末メーカー」になっていると見ることもできる。

「本丸」の米国市場を狙ったが……

 一方、ありがたくないニュースはその通信端末部門の大黒柱ともいえるGALAXY Sシリーズの最新機種「S4」(GS4)の投入に関するもの。実質的に3度めの新製品リリース(初代の「S」を一種の市場テストとみなした場合)となるGS4の投入は、以前に記した通り、ある意味「本丸」となる米国市場の奪取を狙ったもの。3月にあったNYCでの発表にみられた気合いの入り方などからも、そのことははっきりと伝わってきていたと思う。

 その米国での投入がどうも想定通りに進んでいない……。そんな印象を与えるニュースが、GS4発売の24日前後から立て続けに出てきている。具体的には「タマ不足」と「出来映え・品質に関するもの」の二つに分けられるが、いずれもそれ一つで大騒ぎになるようなもの――かつてAppleのiPhone 4の時にあった「アンテナゲート」のような類いのものではない。それでも、今後の展開次第ではいずれも、ボディーブローのように効いてきそうなつまづきにも思える。

 「タマ不足」については先週CNET Japanでも報じられていた通りで、SprintとT-Mobileの下位2社での発売が「後回し」にされた格好。Bloomberg Westではやや誇張気味に「SamsungのGS4ローンチ失敗」と伝えていた。

[Samsung's Launch Failure: Bloomberg West (04/24)]

 本当に単なる需要の読み間違えか、それとも量産に関して何らかの問題が生じていたのか……。真相はそれこそ「藪の中」だが、結果的にはあまり違いはない。消費者にとってはすっかり買う気にさせられた挙げ句に「肝心のモノがなかなか手に入らない」というのは一番始末に負えない事態で、そのことは変な話だが、2012年秋にiPhone 5SやiPad miniのタマ不足で泣かされたApple製品ユーザーが一番よく知っている。

 上記の動画に出てくるJMP Securitiesのアナリストは「Samsungにとって一番のかき入れ時はまだずいぶん先のことだし、タマが出そろうのが数週間遅れるくらいは大したことではない」などといっているが、果たしてそれで済むのか……。このあたりのことは半年もたてば自ずと結果が出ることだろうが、しばらく鳴りを潜めていたAppleのRumor Mill(ルーマー・ミル)が6月のWWDC開催を控えてすでに動き出していることを考えると、Samsungにそれほど多くの時間の猶予が与えられているわけでもないことはほぼ間違いないと思える。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

自社にとって最大のセキュリティ脅威は何ですか

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]