クラウド、モバイル、ソーシャル、そしてそれらが生成するビッグデータといった現在のITを象徴するトレンドは、いずれもコンシューマー市場で先に普及し、エンタープライズはその後追いを余儀なくされてきた。
エンタープライズITの世界ではどうしてもセキュリティや可用性、信頼性といった領域を担保する必要があり、コンシューマーで普及したアーキテクチャをそのまま持ってくることは難しい。BYODの普及がなかなか進まないのもそこに理由がある。
だが、そのタイムラグは、ビジネスのスピードが加速している現在では競争力の低下やイノベーションの失敗など事業に致命的なダメージを与えかねない。
Paul Maritz氏
「エンタープライズにもコンシューマーグレード(Consumer-Grade)なITが必要だ」――。
米ラスベガスで開催中の年次カンファレンス「EMC World 2013」でこう語ったのは現在、Pivotalの最高経営責任者(CEO)を務めるPaul Maritz氏だ。EMCのスピンオフ企業であるPivotalはこの4月、EMCやVMware、そしてGEが出資して誕生したばかりビッグデータベンチャーである。
VMwareの前CEOだったMaritz氏をCEOに迎え、華々しくローンチした同社だが、GEの出資、Maritz氏のCEO就任というビッグニュースに続き、世界中のEMC/VMwareパートナーやユーザ―企業が参加するEMC Worldという場で次世代新プラットフォーム「Pivotal One」の概要がMaritz氏自身の口から語られた。ここでは米国時間5月7日に行われたMaritz氏のセッションの内容をもとに「Pivotal One」の全体像に迫ってみたい。
Pivotal Oneとは
Pivotal Oneは次世代PaaSという位置付けだが、Maritz氏の言葉を借りれば「マルチクラウド環境における“クラウドOS”」と表現する方が近いかもしれない。VMwareなどで構築されるプライベートクラウド、Amazon Web Services(AWS)に代表されるパブリッククラウド、そして「OpenStack」や「CloudStack」で構築されるオープンクラウド、そうしたさまざまな形態のクラウドが混在するヘテロジニアスな環境を、ひとつの“ゆりかご”、つまりクラウドファブリックとしてまとめる。
そのレイヤでは、各クラウド環境の抽象化が行われ、サービスレジストリ機能をもち、自動化やアプリケーションプロビジョニング、ライフサイクル管理などが行われる。クラウドファブリックのアーキテクチャは「CloudFoundry」をベースにしている。
そしてクラウドファブリックの上にはデータファブリックとアプリケーションファブリックが置かれる。データファブリックでは、インジェストやクエリ、トランザクションといったデータ処理のほか、独自のHadoop/HDFS基盤「Pivotal HD」を提供、さらに分散型のインメモリ拡張も実現するという。
Pivotal Oneの構成