まず、読者にBenを紹介しよう。知的で、魅力的な若者である彼は、技術に関するあらゆることに愛着を示してきた。Benはアマチュア無線のTechnicianクラスとGeneralクラスの両方の免許を11歳で取得した。
また中学校では、コンピュータにどっぷりと浸かった。高校を卒業する頃には、彼はMCSE、CCNA、4.0 GPAなどを含むコンピュータやネットワーク関係の資格をいくつも取得しており、数多くの奨学金を獲得した。
彼は高校在学時に、何度か問題のある行為をしでかし、学区の最高情報責任者(CIO)とはやや緊張した関係にあった。幸いBenは、彼が発見したセキュリティホールを学区のIT部門がふさぐのを助けることによって、大きな問題になるのを回避した。
Benは今、大学2年生だ。最近まで、彼の最大の悩みは、計算機科学を専攻するか、電子工学にするか、あるいはその両方かということだった。しかしこれは過去形の話だ。今は、Benが来年も大学にいられるかどうかさえ分からない。
彼は今、違法なコンピュータハッキングが発覚して、大きなトラブルに陥っている。
周囲の人が知ってさえいれば
ACMが2013年4月に掲載した、Zhengchuan Xu教授、Qing Hu教授、Chenghong Zhang教授による「なぜコンピュータの才能を持つ人はコンピュータハッカーになるのか」という論文が、早く(もっとずっと早く)掲載されていればよかったのにと、私は思う。そうすれば、Benの生活に関わっていた人たちも、彼がはまり込んでいこうとしていた問題について理解し、彼を助けられたかもしれない。
研究者たちはこの論文で、犯罪行為を行うハッカーになるまでのプロセスを、入門、成長、成熟の3段階に分けている。論文によれば、これまで本当に注目されてきたのは、そのうち2番目の段階だけだという。
これまでに公表された研究は、主にコンピュータハッカーが成長していく経緯である、2番目の「成長」の段階に焦点を当てている。この段階では、ハッカーたちは緩やかにつながったグループや、バーチャルまたは現実のコミュニティを形成し、指導や共有によって技術的スキルを獲得し、社会秩序やグループの規範、個人的および社会的アイデンティティを確立する。
しかしこの論文では、ほかの段階について注意を向けている。
しかし、最初の段階と最後の段階(入門と成熟)を対象とした研究はほとんど行われておらず、多くの疑問には答えがないか、答えが漠然としている。例えば、どのように、なぜ才能ある若者が病的なコンピュータハッカーになってしまうのかという疑問だ。