SNSの友人と「お金」をシェアする時代

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2013-06-11 08:00

 われわれがSNSで友人と共有するもの。それは、情報、体験、喜びや悲しみの感情、お祝いやちょっとした感謝の気持ちなど、全て無形のもので、そこに金銭的な価値は付与されていない。

 しかし、Puddleと呼ばれるスタートアップが提供するのは、SNSを通じて友人と「お金」をシェアする仕組みである。

Puddleの仕組み

 では、Puddleとは何か。Puddleは自らをこう定義している。

A puddle is like a small bank owned by you and your friends. You set the rules. (Puddleは、あなたとあなたの友人によって所有される小さな銀行みたいなもの。ルールは自分たちで決める)

 具体的には、自分の信頼する友人たちとお金を出し合って、そこから必要な資金を借りる仕組みである。つまり、銀行やカード会社などからお金を借りずに、自分の友人たちからお金を借りる、ある種のソーシャルレンディングである。実際の利用イメージはこんな感じだ(詳しくはこちらの記事を参照されたい)。

  1. Facebookアカウントを利用してPuddleに口座を開設し、お金を借りた場合の金利を設定する
  2. Facebookの友人を招待し、資金の拠出を求める
  3. 参加者は拠出された資金プールからお金を借り、定められた金利を付加して返済を行う
  4. 資金プールに残高がある限り、参加者は必要に応じて借りる、返済する、を繰り返すことができる。お金のやり取りはPayPalかデビットカードで行われ、拠出された資金はWells Fargo銀行で管理される

 参加者は、お金が必要な時には、金融機関が提供するローンよりも低い金利で借りることができて、お金が余っている時には、高い金利で運用することができる。また、信頼する友人同士の強いピアプレッシャーが掛かるので、返済が滞る可能性が極めて低くなると想定される。

 個人間の融資という意味ではProsperなどのソーシャルレンディングが想起されるが、これは一対多で不特定多数の人たちをつなぐ仕組みである。それに対し、Puddleは、Facebookでつながる特定の友人のみのグループを形成し、その中でお金を出し合い、必要な時にお金を借りる仕組みである。

Puddleの本質

 ある意味、これもシェアリングエコノミーである。カーシェアリングやAirBnBのように、使っていない時は他の人に貸せばいいという発想だ。こと、お金のことだから、知らない人ではなくて、知っている人同士のグループの中で貸し借りができれば、安心だ。

 わざわざ金融機関に高い金利を払ってお金を借りなくても、友人から余っているお金を借りればいい。金融機関にしてみれば、新たな代替サービスの登場ということになる。

 そして、F2F(Friend to Friend)とも呼ばれる、この仕組みは、個人が主役である。金融機関の元本保証型の運用商品とは異なって、信頼すべき友人が返済をやめてしまったら、その損失は資金を拠出した、その友人たちで被ることとなる。

 つまり、友人同士のピアプレッシャーがしっかりと機能することが重要なのである。個人が主役となるサービスは、個人が担う役割がしっかり担保されるよう設計することが、永続性を持つか否かの分かれ目である。

 日本の感覚だと、友人同士で金利を設定してお金のやり取りをするというのは、今一つピンと来ないが、契約社会の米国ではありなのかもしれない。また、Puddleは、途上国支援のマイクロファイナンスで有名なKivaの創業者によって立ち上げられたサービスである点も、何か期待させるものがある。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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