グーグルは7月17日、エンタープライズ事業の進捗状況の説明会を開催した。米Googleエンタープライズ担当社長のAmit K Singh氏が説明した。
Singh氏は、米国ではFortune 500の58%、国内では富士フイルムや全日本航空(ANA)、クボタなどの大企業から中小企業、スタートアップ企業など幅広いユーザーが有料のサービスを利用していると説明。「Googleはコンシューマーの世界で机に縛られず、どこでも情報を利用できる環境を提供することに成功した。そのパワーをエンタープライズの世界にも提供している」とエンタープライズ分野でもGoogleが活用されていると自信を見せた。
日本でコンシューマー向けサービスを利用し、情報が漏洩した事件について「エンタープライズサービスはもっと細かく情報公開の設定が可能で、安全な環境の中でやり取りが行える」と情報漏洩の危険が少ないことを強調した。
中小から大規模のすべてに対応
Singh氏はエンタープライズ向けのメリットとして(1)Connect=共同作業でつながる、(2)Visualize=データの可視化、(3)Build=クラウドプラットフォームの活用、(4)Find=どのシステムでも最適な情報を検索、(5)Access=どのデバイスからでも――という5つを挙げた。
具体的な事例として、フィリピンの携帯電話キャリアは「Google Maps」上に現在、どの地点で通話が行われているのかを可視化。通話が多く行われている地域を把握し、基地局開設計画に利用するといった使い方を行っていることや、Fortune 500のうち58%がユーザーであるとアピールした。
米Google エンタープライズ担当社長 Amit K Singh氏
「日本での先駆け的に(SaaSの)“Google Apps”を採用したソフトバンクをはじめ、クボタや富士フイルムはグローバル事業展開用にGoogle Appsを採用している。クラリオンはコンシューマーにサービスを提供するために、カーナビゲーションシステムの中にGoogleマップとわれわれの検索技術を搭載して提供している。ANAでは現在、全社的にGoogle Appsを採用するために移行作業を進めている。この移行によって、パイロットは重い紙のマニュアルを持つことなく、タブレットに入れた情報を利用することができるようになった」(Singh氏)
事例として紹介されることが多いのは大企業ばかりだが、「中小企業でも導入されている」ことをSingh氏はアピールした。
従業員20人というシージェイシステムでは、ファクスで届く注文書をデジタルデータ化し、それを社内で共有するためにGoogle Appsを採用した。従業員50人程度という中館建設では、Googleマップ上に情報を展開し、自分たちのトラックの現在地点を社内全体で把握し、業務を効率的に展開する際に利用しているという。
スタートアップ企業の事例としては、ゲームソフト開発のApplibotでは自分たちでサーバなどインフラを持たず、PaaS「Google App Engine」を採用。開業当初の数人体制から200人体制となった現在でも、社員全員がサーバ管理業務に携わることなくゲーム開発に従事しているという。
GoogleはIaaS/PaaS「Amazon Web Services(AWS)」を後発として追いかける立場となるが、「Amazonが素晴らしいサービスであることは承知しているが、われわれはユーザー企業に選択肢を提供する。そしてわれわれのサービスは、われわれのデータセンターの一部を提供している。そこからもわかる通り、規模とコストメリットも提供できる」と後発ではあるが、IaaS事業を展開することに意味があると強調した。
日本ではGoogleのコンシューマーサービスを利用したことで官公庁や大企業の情報が漏洩していることが明らかになったばかり。その点については、「コンシューマーサービスについて言及する立場にはない。だが、エンタープライズビジネスの責任者として、エンタープライズサービスのセキュリティはコンシューマー向けに比べてもっと強固で、柔軟に情報共有者を細かく設定できる」とエンタープライズ事業では、同様の情報漏洩事故は起こりにくいことを訴えた。