SAPジャパンは8月6日、インメモリデータベース「SAP HANA」をベースにしたSaaS「SAP Sales and Operations Planning powered by SAP HANA(S&OP)」の提供を開始した。価格体系は非公開としている。
S&OPは、企業での需要と供給(需給)の業務の計画策定や調整を支援するための「意思決定ツール」(SAPジャパン ソリューション本部 アプリケーションエンジニアリング部 ビジネスエンジニアリング ダイレクター 原尚嗣氏)になる。
企業内での需要となる販売部門は、率直に言えば、売れるものがあるのであれば、いくらでも売りたいはずだ。相対する供給となる生産部門は、売れるに越したことはないが、在庫の山というリスクを抱えたくはない。仮に、販売部門と生産部門が強気になって生産計画を上方修正して、生産量を増やそうとしても、原材料や部品をどう調達するのか、製品を顧客に届けるための物流をどう確保するのか――。
このように需給を巡る調整は、いくつもの現業部門が絡んでおり、常に複雑な業務だ。それ以前に、製品の需給は、財務部門を中心にして立てられた中長期的な視野での戦略的計画がベースとなっている。戦略的計画と短期的な実行計画の整合性を取って、連携させる必要がある。SAPジャパンが提供を開始したS&OPは、複雑極まりない需給を効率化しようというものだ。
需給プロセスにソーシャルメディアを組み込む
一般的に需給業務では、営業やマーケティング、財務、製造、調達、物流などの複数の部門が連携しなければならない。これらの部門はそれぞれが独自に製品価格や売上予測、在庫の数、製造コストなどのデータを保有している。S&OPでは、これらのデータを一元的に管理する。
S&OP上で、例えば、ある拠点で生産量を増やしたら、どの程度売り上げられるのかなどをシミュレーションできる。このシミュレーションは、HANAを基盤技術としていることからリアルタイムにシミュレーション結果を把握できることがメリットであると強調している。
また、S&OPには、モデリングがすんだ需給プロセスのテンプレートが用意されている。テンプレートを利用すれば、2~3カ月の導入期間で利用できるようになるという。
S&OPでは主要なデータをまとめて表示するダッシュボード上でもJamベースのコミュニケーションを交わせる
S&OPにはまた、企業内ソーシャルコラボレーションツール「SAP Jam」が組み込まれている。販売計画が変更になった場合、生産部門の側では、もともとどういった前提で販売計画が立てられていたのか、そして販売計画がどのように変更されたのかをソーシャルコラボレーションツール上で知ることができる。
原氏はソーシャルコラボレーションを組み込んだ理由について、これまでの「メールとExcelでは不十分。文脈を残しておくことが重要」と、その優位性を強調した。
S&OPでは、シナリオ分析機能も搭載される。シナリオ分析は、利益最大化を狙うのか、それとも売り上げの最大化を狙うのかなどのシナリオを用意。そのシナリオを元に需給を調整できるという。
原氏は、需給計画はもともと、統合基幹業務システム(ERP)に搭載されていたと説明。だが、「ERPという閉じられた空間の中にあるものだけでは不十分」とS&OPの開発背景を解説した。「ERPの外にあるデータも必要」(原氏)だからだ。
そこでS&OPでは、ERPパッケージ「SAP ERP」や顧客情報管理システム(CRM)パッケージ「SAP CRM」などのSAP製アプリケーションからのデータはもちろん、Excelといった表計算ソフトウェアからのデータも取り込めるようになっている。
S&OPは2011年11月にパイロット版がリリースされた。それから3~4カ月ごとに新機能が追加されている。パイロットユーザーとして消費財メーカー大手Unileverなどの大企業が活用しており、評価の声が寄せられているという。