リスクを取ることには、よい点もある。本当に革新的なことを成し遂げるには、リスクを取ることが唯一の方法である場合も多い。多くの人はそれこそが唯一の方法だと主張し、それによって開ける素晴らしい新たなチャンスについて語る。そこで、たとえあらかじめ備えることができない本物のリスクである、未知の未知が存在することを知っている場合でも、リスク管理計画とリスク管理を使えば、リスクを理解し、コントロールすることは可能だと自分たち自身を説得するわけだ。
リスク管理のもう1つの問題は、多くの潜在的なリスクが過去の事例から予想されているということだ。しかし、株のブローカーなら誰でも、過去のトレンドを見ても将来の金融市場を予想することは不可能だと言うだろう。われわれにできることは、予想を立てることだけだ。実際にどのようなリスクが発生するかは、起こってみなければ分からない。確かに、分析し、過去の傾向を調べ、不測の事態に備えて時間、経費、人的資源に余裕を持たせることはしているが、どの時点でこのような労力が利益を上回り始めるのだろうか。
リスク管理によって、プロジェクトの失敗や、外部事情による悪影響を防げるのなら、あらゆるプロジェクトは成功するはずだが、そうなっていないことは明らかだ。では、ほとんどのプロジェクトに当然起こりえる予想可能なリスクのために、時間を費やしたり計画の手間をかけるべきではないということだろうか?単に問題が発生した時にそれに対処する方が、より効果的だろうか?少なくとも、その方が問題は具体的になっており、解決方法を考えるのも楽になる。プロジェクトに問題が発生するかもしれないということを認めてしまえば、新しい技術が予定通りの効果を発揮しなかったり、前提が間違っていたり、優先順位が変わったり、その他プロジェクトの成果にマイナスの影響を与える要因が生じたりというような不可避な事態が発生しても、不意を突かれることはない。
もしリスクは現実化するということを知っていれば(そのリスクがどういうものかを知らなくても)、問題や不確実性はすべてのプロジェクトにつきものだという、落ち着いた態度で受け入れることができる。問題が起こった時に、過剰反応をしたり、これでプロジェクトは失敗だと焦ることもない。
リスク管理は賢明なプロセスのように見えるし、実際に新米のプロジェクトマネージャーには役に立つかもしれないが、プロジェクトの本当のリスクに対応することはできない。そういった要素は予想不可能なのだ。とはいえ、われわれはリスク管理を今後も、必要不可欠なものであり、よきプロジェクト管理の基本的な構成要素の1つだと考えるだろう。リスク管理の準備をせず、単に未知のタスクが起こる不測の事態が起こるかもしれないという心構えだけでプロジェクトを進める勇気のあるプロジェクトマネージャーはいないはずだ。しかも、それを上司に説明するのは難しい場合が多いだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。