欧米は20年--エネルギー業界の構造変化は一気に進む可能性:アクセンチュア見解

齋藤公二 (インサイト)

2013-10-02 12:53

 アクセンチュアは10月1日、エネルギー利用に関する消費者調査に関する記者説明会を開催。2013年版の日本語ハンドブック「新しいエネルギー消費者体験の実現」にまとめられた調査データをもとに、エネルギー業界の展望や消費者意識の変化などを解説した。

 その上で、政府が進める電力システム改革や通信事業者など異業種による参入、都市ガスの自由化などを背景として、国内では2020年までの間に、欧米が20年かけて進めてきたような構造変化が一気に起こりうるとの見通しを示した。

 調査は、同社が2010年からグローバル規模で実施しているもので、今年で4回目。調査は2012年12月に1カ月間、21カ国1万1154人を対象にアンケート方式で実施され、各国ごとに500人(米国は1020人、英国は634人)が回答した。


アクセンチュア 素材・エネルギー本部 公益事業部門統括 マネジング・ディレクター 宮脇良二氏

欧米に見るエネルギー業界の4つのトレンド

 素材・エネルギー本部で公益事業部門統括を務める宮脇良二氏は、エネルギー業界の構造変化について「これまでのような電力vsガスの戦いから、総合エネルギーグルーブ同士のブランド力の戦い」になると指摘した。電力会社やガス会社は、エネルギーの自由化を受けて事業領域が拡大し、住宅のリフォームなどのサービスも取り扱うような「総合ユーティリティ企業」に進化する。

 太陽光発電で名乗りを上げて話題となったソフトバンクグループをはじめとして通信大手、流通大手などがエネルギー小売市場に参入する。今後は石油も含めた業界再編が進み、構造変化が加速していくという。

 こうした予測の背景にあるのは、先行する欧米諸国の事例だ。特に、豪州や英国、米テキサス州で電力が自由化進んでいる。自由化の開始時期は豪州が2002年、英国とテキサス州は1998年だが、自由化から約10年経った2010年には、電力やガスの契約を従来の会社とは違う会社に変えたことを示す変更率は、豪州で50%超、英国とテキサス州が41%となった。

 「オーストラリアのように、自由化に先進的な地域では、消費者の2人に1人がエネルギー会社を自ら選択していることになる。そうした中で大手エネルギー企業がシェアを落とし続け、新規参入者の市場シェアは3割に迫るまでになった」(宮脇氏)

 欧米で実際に起こっていて、今後日本でも起こりうるトレンドとしては、大きく4つある。1つは総合エネルギー化だ。たとえばガスと電力を1つの会社がバンドルして提供することで提供価格を下げる。英電力会社が提供する「デュアルフューエル」では、電力とガスを別契約にすると101ポンドかかるが、バンドル提供では99ポンドになるという。

 2つめは、異業種からの参入だ。豪州では通信事業者のDoDoが新規参入しDoDo Power & Gasを展開している。電力・ガスの契約をオンラインで販売したり、オンラインに特化することで低価格の損害保険を販売したりと「エネルギーと通信の融合」で顧客の利便性向上を図っているという。

 3つめは、新たな協業枠組みの登場だ。「ブランドの戦い」になるため、ブランド力のない企業がブランド力のある企業と協業するケースが増える。スコットランドの事例では、電力会社のScottish & Southern Energy(SSE)が、英国の著名小売業Marks & Spencerと組んでM&S Energyという会社をつくり、契約更新のタイミングでのM&Sのバウチャ提供やポイント基盤の構築などを行っているという。

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