これからの働き方を考えることは企業にとってもメリットがある
サイボウズ山田副社長との会話は刺激的なものだった。「これからの働き方論」の話題になると従業員側に好都合な思考に走りがちだが、企業側にとっても価値があると考え、実践している企業が存在していることが分かったのは収穫だ。念のためサイボウズの試みについて他の中小企業の経営者の方や中小企業診断士の方はどう思うか、筆者の知人10名ほどに尋ねてみたところ、誰もが関心を示していた。
特に「大企業流の働き方が課題となって、働きたくても働き続けることのできない女性」の立場にたった人事制度、就業規則は大企業と闘うための武器だ、という考え方にはハッとさせられるという意見は多かった。
私が今回のインタビューで感じたサイボウズの会社を使った「壮大な社会実験」は現代の日本企業で一般的に「悪」もしくは「古い」とされている考え方に対する、解決策を実践しているように感じた。労働時間より成果を重視する欧米型の働き方と、会社を辞めた時の従業員の今後の事も考慮に入れた日本的家族経営の温かさ。両社の良い部分を取り入れ今の時代の企業と従業員の1つのロールモデルになるのではないだろうか。
・優秀な社員の定義- × 長時間労働可能な社員
- ○ 成果を出せる社員
- × 定年まで面倒見る(実質崩壊しているが)
- ○ 会社が潰れても、自分で飯を食えるように育てる
- × お金と働く場所だけの繋がり
- ○ 「共通の価値観」を共に実現するコミュニティ
そして、面白いのが一般的に「自由な働き方なんて推奨したら仕事しなくなる」「副業解禁したら本業に影響が出る」といった意見が出そうだが、施行してみたら、意外とそんなことはなかった、という点である。何事も想像だけで決めつけてしまってはいけないということだろう。
サイボウズのような企業があると知れば、大企業で出産を契機に退職を考えざるをえなくなった女性達が「働き方」に魅力を感じて転職してくる可能性は十分にあるのではないだろうか。実際サイボウズの例ではバランス型、ライフ重視型を選択している社員の大半は女性が多く、こういった働き方が女性にニーズがあることがうかがえる。
男性目線で見てもサイボウズのライフ重視を選択し、本業と副業で生活とやりたいことのバランスを取ることに魅力を感じる人も居るだろう。
今回のインタビューで得た答えは「これからの働き方」を考えることは「企業にとってもメリット」があるということだ。そして「働く」ということは一体何なのか。改めて深く考えるきっかけとなった。副業、独立、退職、出戻りすべて自由! というサイボウズのような会社がもし増えだしたら、私達は企業で働くということに何を求めるのか。
サイボウズ式編集長の大槻幸夫氏に「なぜ、サイボウズで働くのか」を聞いてみた。「他社と差別化されたブランド、製品があり、それを社会に認知してもらう仕事に興味がある。さらに会社が適切な評価と職務を与えてくれていることに満足しているからです。そして、一番大切なことは、信頼できる仲間が居るからですね」
給料だけではない、企業と従業員の関係は日本でも現れ出している。
- 大元隆志
- 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を13年経験。異なるレイヤの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。『ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦』など著書多数。
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