この記事をまとめたCam Simpsonという記者は、大変なトラブルに巻き込まれたDhongらを、「Appleによる最もアグレッシブな(iPhoneの)生産・投入スケジュール」(“most aggressive production-and-launch schedule ever attempted by Apple”)の犠牲者として、かなり意図的に描きたがっているように見受けられる。ただし、言うまでもなく、彼らの苦難の直接的な原因がApple(だけ)にあるというわけではない(大げさにいえば、資本主義とかグローバルな市場経済とかに起因する問題、といえなくもない)。
また、Dhongらのエピソードが全世界に約15万人もいるというFlextronics工員の中で、例外的な出来事かどうかなどは、この記事からは分からない。さらに、そもそもネパールやその他の国のなかで、出稼ぎ労働者に借金(前借り)を追わせるような慣行を取り締まれないのかなどについての説明もない。
一方で、毎四半期ごとに100億ドル近い、あるいはそれ以上の利益を出し、しかもFelix Salmonいわく「(一定期間株式を保有するだけで)会社のためには何もしていない株主」(註1)に1000億ドルも還元するといっているAppleなら、もっとほかに金の使い途もあるのでは、という気もしてくる。
日本の女工哀史や米大陸横断鉄道建設に関わったアジアからの移民労働者など、時代の大きな流れのなかで辛い立場に立たされた(犠牲になった)人々の例は少なくないだろうが、ただし自分がいま手にしている製品ができてくるまでのプロセスに、そうした辛酸をなめた人々がいるとの話を見聞きするといつもなんだか落ち着かない気持ちになる。
いずれにせよ、2012年前半のFoxconnの労働環境改善では、The NewYork Timesの報道に対して素早い反応を見せたTim CookとAppleが、今度はどんな手を打ってくるのか(あるいは来ないのか)。今後の動きが注目される。
註1) But shareholders really do nothing for Apple, which hasn’t had a public stock offering in living memory...
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