空間データが変える未来

G空間情報が変える社会とビジネス

高橋睦(野村総合研究所) 2013年12月19日 07時30分

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G空間とは

 ちょうど本稿を執筆していた12月3日、米Amazon.comが小型の無人ヘリコプターを利用した宅配サービス「Amazon Prime Air」の計画を明らかにした。筆者も最初にこのニュースを聞いたとき「そんなことができるのか」と思わず笑ってしまったのだが、一方で、いよいよG空間もここまできたかと感じたものである。 無人ヘリによる宅配を可能にするのは、GPSによる高度な測位と、宅配先、つまり住所情報が紐付く正確な地図情報の存在である。それこそが、G空間技術の核心だからだ。

 G空間という言葉を最近聞くようになった。「G」は英語の「Geospatial」を由来としており、ICT(情報通信技術)と地図やGPSの位置情報を融合させたサービス分野のことをG空間と呼びつつある。「いつ、どこで、何が、どのような状態かといった、位置や時間と関連した情報」を従来「地理空間情報」と呼んでいるが、G空間情報はそれと同義である。地理空間情報は住宅地図などの紙地図や台帳などアナログ情報も含む言葉だが、よりICT的な意味合いを強めた言葉として、G空間は政策的に使われるシーンが増えている。

 政府は2012年3月に策定された新たな「地理空間情報活用推進基本計画」において、地理情報システム(GIS=Geographic Information System)と測位技術により地理空間情報を高度に活用した社会を「地理空間情報高度活用社会(G空間社会)」と定め、その実現を目指すとしている。3月から、ICT成長戦略会議と並行して、総務大臣主宰の「G空間×(タイムズ)ICT推進会議」が開催され、6月に発表された「日本再興戦略」のアクションプランや「世界最先端IT国家創造宣言」ではさまざまな項でG空間情報の利用に言及されるなど、存在感が高まっている。

なぜG空間か

 なぜいまG空間なのか。

 第一の理由として、G空間情報の活用環境が整いつつあることが挙げられる。

 日本で最初に地理空間情報やGISの重要性が高まったのは、1995年の阪神淡路大震災である。その後、2007年に地理空間情報活用推進基本法が策定されるなど、制度整備は粛々と進められてきた。そしていま、G空間社会の実現性が高まった要因として次の3つが挙げられる。1つ目は測位技術の向上。2つ目は大容量、高速通信といった情報通信技術の進展。3つ目はGoogleショック、オープンデータやオープンソースの普及といったデジタル地図の開放である。

 1つ目の測位技術については、スマートフォンでは携帯基地局やWi-fiの補正技術も合わさり、日常生活では違和感がないほど測位精度が向上している。2010年代後半を目処に準天頂衛星が4機体制となり、都市部や山間部のさらなる精度の向上により官民さまざまなサービスへの活用が期待されている。

 2つ目の情報通信の大容量、高速通信の実現により、デジタル地図やその上に表現される位置情報付きコンテンツが、携帯端末などでスムーズに表示、検索できるようになった。さらに、さまざまな端末やセンサーから人やモノの位置情報を取得し、ビッグデータとして活用することが可能になりつつある。

 そして3つ目が、デジタル地図の開放である。規約で設定された範囲であれば誰でも無償で利用可能な「Googleマップ」や「Google Maps API」の登場は、非常に大きなインパクトであった。専門家や専門業務のためのツールであったGISが、個人が日常使えるツールに変化したのだ。いまではAPIの選択肢の増加とスマートフォンアプリ開発の手軽さもあって、位置情報やマップを活用したサービスが多数開発されている。

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