デジタル化に対応するための3つの施策
デジタル化に対応するために、ガートナーが提案するのが3つの対策だ。1つめは「強い『デジタルリーダーシップ』の確立」。具体的には、デジタル化を組織として推進する体制を作ったり、“最高デジタル責任者(Chif Digital Officer:CDO)”といったデジタル化担当役員を設置したりといった取り組みだ。
CDOの設置率はグローバルで6.6%、国内で2.2%だが、今後1~2年で3倍程度に増える見込みだという。経歴としては、マーケティング、IT、ビジネス戦略を経験した担当者がCDOにつく割合が高かった。レポートラインは最高経営責任者(CEO)が42%、最高マーケティング責任者(CMO)が22%、CIOが16%となった。

※クリックすると拡大画像が見られます
「まったく新しい職ではなく、デジタル化推進のエバンジェリストのようなイメージだ。デジタル化がすべての領域で進めば、将来的にはなくなるファンクションでもある。本来的にはCEOが担うことが望ましい。デジタルへの精通度が高いCEOとビジネスの成長には相関があることもわかっている」(長谷島氏)
2つめは「ITの『コア』の刷新」。コアというのは、クラウドやウェブのインフラ、情報、人材、ソーシングなどに関するIT戦略を見直すことだ。具体的なIT施策としては、4つの領域があるという。ポストモダンERP/アプリ(Postmodern ERP/apps)、より多様なパートナーシップ(More-diverse partnerships)、次世代の情報分析能力(Next-generation information capabilities)、ハイブリッドクラウド(Hybrid cloud)となる。
ここで注目できるのは、クラウドへの投資理由が「コスト削減」から「俊敏性への獲得」に移り変わってきていること、ソーシングの関係を変える意向が高まってきていることだという。クラウドの導入理由としてコストを上げたのは14%であるのに対し、俊敏性は50%に上った。ソーシングについては80%の回答者が「今後2~3年のうちにソーシング関係を変える予定だ」とし、46%は「新しいカテゴリのパートナーと協業する必要がある」とした。

※クリックすると拡大画像が見られます
3つめの「2つの流儀の習得」は、従来型モードのITとノンリニアモード(非線形)のITというスピードの異なる2つのIT(Two-speed IT)の両方に対応できる組織やチーム、スキルを作ることを指している。ここで言う、従来型のIT(conventional)の特徴は、ウォーターフォール型開発、馴染みのベンダー、厳格なガバナンス、最小化されたリスク、テクノロジチームなどとなる。一方、ノンリニアモードのIT(nonlinear)の特徴は、アジャイル開発、小規模/革新的パートナー、簡易的、丁度良いガバナンス、管理されたリスク、専門家混成チームなどとなる。
「安定や確実性が求められる場合は従来型モード、スピードやイノベーションが必要で不確実が高い場合はノンリニアモードといったように、2つの流儀を使い分ける。それにより、新しいITに対応できず、身動きが取れなくなる事態を防ぐことができる。調査の結果、45%のCIOはアジャイルを特徴とするノンリニアモードのオペレーションを構築していた。だが、大半は2つの流儀をまだ生かしきれていない。全体の準備という点ではまだまだという状況だ」(長谷島氏)
2つの流儀に対応する上では、現在ある組織にCDOを中心としたプロダクトごとの専門家混成チームなどをアドオンするかたちが望ましいとした。
Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebook、Twitter、RSS、メールマガジンでも情報を配信しています。