通信のゆくえを追う

通信事業者のビジネスに大きな影響を与える因子について - (page 2)

菊地泰敏(ローランド・ベルガー)

2014-04-28 07:30

 2005年当時を振り返ってみよう。当時、移動体通信事業者といえば、ドコモ、KDDI、そしてボーダフォンであった(PHS事業者を除く)。その3社に加え、新たに移動体通信事業の免許が発行されることになった。「新規参入」である。

 この機会に手を挙げたのが、ソフトバンク、イー・アクセスとIPモバイルである。

 実際にはソフトバンクはボーダフォンを買収することになり免許申請を取り下げた。また、IPモバイルは資金が行き詰まってしまい、実際に新規参入したのはイー・アクセス(イー・モバイル)のみとなった。

 このイー・モバイルの新規参入により、主にデータ通信において価格競争が進んだことは多くの方々の知るところであろう。

 さて、あっさりと書いてしまったが、「免許」というのが移動体通信事業において非常に重要であることに異論はないであろう。電波という有限な資源を利用する移動体通信事業において、免許を獲得すること、すなわち「新規参入」できることなのである。逆な言い方をすれば、免許がなければ参入の余地はない。これはあらゆる規制産業について言えることである。

 ポーターの5F分析が、製造業についてはよく当てはまるものの、サービス業、その中でも金融・運輸・通信などといった規制産業には当てはまりにくいという批判もご理解いただけるであろう。

 さて、この規制であるが、誰が何のために行っているのか。

 日本においては総務省が、米国においてはFCC (Federal Communications Comittee)、英国においてはOfcom (Office of Communications)が情報通信産業の規制を行っている。そしてその目的とは、各国における情報通信産業の健全な競争の促進とその結果による消費者への多様で品質の高いサービスを適正な価格で提供することである。

 日本においては1985年に情報通信に関する大幅な規制緩和が行われた。それまでは国内通信は電電公社、国際通信はKDDのみがサービスを提供しており、競争という概念はなかった。

 規制緩和に伴い、NTTは地域網を担う東西会社、長距離・国際を担うNTTコミュニケーションズ、移動体事業を担うNTTドコモ、システム事業を担うNTTデータなどに分割されるとともに、多くの新規参入事業者が現れた。

 地域サービスは、各地域の電力会社が子会社を通じて参入した(例えば、東京電力の子会社のTTNetなど)。長距離では第二電電(DDI)、日本テレコム(JT)、高速通信(TWJ)であり、国際では国際デジタル通信(IDC)、日本国際通信(ITJ)というプレーヤーが現れた。移動体通信ではデジタルホン、デジタルツーカー、IDO(日本移動通信)など、それこそ雨後の筍の勢いで通信事業者が林立したのである。

 この後、当初存在していた長距離・国際、移動体、地域通信といった市場セグメントの壁が外されるとともに、多くの通信事業者は合従連衡の嵐に巻き込まれ、現在ではNTTグループ、KDDIグループ、そしてソフトバンクグループの三大勢力に落ち着いている。

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