このテクノロジは大変な注目を浴びており、自分で服や家具をプリントするという夢が語られているが、3Dプリンティングがもし変革を起こすとすれば工場の中であり、家の中ではないだろう。
3Dプリンティングは間違いなく、モバイルに次ぎ、ネットワーク接続された自動車やウェアラブル技術と並ぶ、テクノロジ業界でもっともホットな分野の1つだが、3Dプリンティングの基本的な要素は何十年も前から世に出ていた。しかし、基本的な特許の問題や、扱える素材が限られていること、プリンタの価格が高いことなどから、長年の間この技術は製造業の分野でしか使われてこなかった。
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しかし積層造形法(3Dプリンティングとも呼ばれる)に関する重要な特許の大半は、すでに期限切れ、または間もなく期限が切れるため、3Dプリンティング業界は大きく前進すると期待される。Bits to Atomsの創立者であり、Shapeways 3DのプリテンィングデザイナーであるDuann Scott氏によれば、3Dプリンティングで使用されているレーザー焼結による製造プロセス(これによって品物は完成する)の特許は期限が切れたため、レーザー焼結を使った革新的な手法が数多く登場して、技術が大きく進歩する可能性がある。
しかし、業界が発展して、モバイル技術と同じような形で新たな特許が申請されていけば、ライセンスに関する合意が行われない限り、訴訟が起こることになるだろう。特許に関する争いは、今日のテクノロジの世界では不可避であり、この業界の可能性を考えれば、いつ起こってもおかしくない。そして、これがいずれ進歩の足かせとなる。大企業が参入にしてくるようになると、小規模なプレーヤーは知的財産を利用するための高いライセンス費用を払えず、成長を阻まれるかもしれない。
(現在のところ)安価な家庭用3Dプリンタを作るためのクラウドファンディングプロジェクトは多いが、その用途や価格、使える材料は限られている。企業がサプライチェーンの中で3Dプリンティングを使いたい場合は(より安く製品を作るためであれ、個々の部品を製造するためであれ)、自前で数千ドルの機材を購入することができるのでないかぎり、専門の業者にアウトソースする必要がある。
多くのテクノロジ企業が3Dプリンティングを自らのビジネスモデルに利用する方法を模索している。General Electricは3Dプリンティングをジェットエンジンの部品の製造に利用しており、Boeingは様々な航空機の部品を製作し、Herseysはさまざまな形の食べられるお菓子をプリントし、Defense Distributedは家庭用3Dプリンタを使って銃の部品を作っている。
Hewlett-Packardも2014年中に3Dプリンタ市場に参入すると言われているが、詳細は明らかになっていない。この市場に対する同社の関心は、安価なプリンタという形で表れる可能性もあるが、単純にプリントに必要なインクや材料の製造に特化する可能性もある。
このテクノロジは、サプライチェーンを改善するのにも利用できるが、昨今の3Dプリンティングの進歩からもっとも恩恵を受けているのは、間違いなく医療分野だろう。軽くて安い人工装具や人工骨のプリンティングは、3Dプリンティングが医療をより安価なものにしてくれる好例だと言える。筆者が3Dプリンティングが最も大きな影響を与える分野を問われれば、医療と答えるだろう。