Heap氏はMITへの訪問以来、研究、開発を4年にわたって繰り返してきている。そして同氏は「オタクの地下社会」の一員となり、エンジニアやデザイナー、アーティストからなる8人のチームを結成した。
開発が進むにつれて、グローブを装着した状態でも自由に動き回れるようになってきた。ちなみに当初のバージョンは、同時に複数のコンピュータに結線しておく必要があった。
コストもより低く抑えられるようになってきた。現時点で、このワイヤレスグローブは1200ポンド(2000ドル)程度で販売されている。
このグローブはすべての指の動きを個別に記録し、それぞれに従ったサウンドを生み出すようにプログラムできる。これによって、「新しく、直感的な方法」でコンピュータを用いた作曲が可能になる。
開発チームによると、Mi.Mu Gloveはすべての指の状態を「感じる」ことができるため、ピースサインや親指を立てるサインなどを認識できるという。ユーザーがユニークなサウンドを生み出すために使えるジェスチャーはほとんど無限にある。
このグローブによる「演奏」の方法は、人によってさまざまなものとなる。ソフトウェアはオープンソースであり、完全にカスタマイズ可能である。また、このグローブはx-OSCモジュールと呼ばれるセンサを搭載しているため、手の回転や動きの速さ、空間内の位置をすべて検知できる。
これはスマートフォンに内蔵されているコンパスや加速度センサの動作とよく似ているが、そういったセンサがすべての指に搭載されており、その精度はずっと高いものとなっている。また、このグローブには光源と、振動を発生させるモーターが搭載されており、装着者にフィードバックを提供するようになっている。
グローブと音楽システムはソフトウェア(開発中)で接続されるため、特定のクリエイティブな応用に特化したジェスチャーを作り出すこともできる。また、このソフトウェアはMIDIやOpenSound Control(OSC)を解釈できるようにもなっている。
開発チームはKickstarter上のキャンペーンを通じて、グローブの量産に向けた段階に移ることを目指している。彼らは評判を広め、支持者を募り、動きをサウンドに変えるというニーズを満足させようとしている。このキャンペーンは4月末時点で570人以上の支持者を得て、10万8000ポンド強を集めている。
このグローブは現在、音楽分野と芸術分野が対象となっているものの、他にも多くの潜在的応用分野が考えられる。
手話を使用する聴覚障がい者は、手の動きによって語れるようになる。また医者の手は、動きに基づいて生成される音を手がかりにできるようになる。
さらに、仮想現実を体験する際には触覚機能によって深い没入感が得られる。
Kickstarterで「COLLABORATOR」(コラボレーター)となった支援者(4950ポンド以上の出資が必要)は、このグローブのプロトタイプを入手し、開発チームとともに作業できる。この段階で得られたフィードバックは、製品化される際の最終設計に生かされる。
また、「FUTURE GLOVER」(将来のグローブユーザー)と呼ばれる出資者らは、量産型のグローブを最初に手にする権利が得られる(10ポンド以上の出資が必要)。
Heap氏はこのグローブが「作曲と演奏の方法に革命をもたらす」と考えている。こういったウェアラブル技術によって、ジェスチャーをベースにしたウェアラブル機器の時代が幕を開けようとしている。
筆者はこのチームの目標達成を心から願っている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。