2014年度のクラウド事業戦略「Global Cloud Vision 2014」を4月15日に発表し、記者向け説明会を行ったNTTコミュニケーションズ(NTT Com)。2014年度売り上げ目標2000億円を掲げ、サービスの拡充やM&A(合併・買収)など、増収のための戦略と投資を積極的に加速する同社代表取締役社長の有馬彰氏に、クラウド事業のグローバルな展開における取り組みとその意義や課題について話を聞いた。
最近のNTT Comの具体的な取り組みとして、目を引くのがデータセンターの拠点数および拠点数の拡張。2012年度138拠点・14万8000平方メートルだったキャパシティーが2013年度146拠点、19万8000平方メートルとなり、2014年度以降の竣工を含めると、153拠点、24万6000平方メートルとさらなる拡張を予定している。
NTTコミュニケーションズの代表取締役社長、有馬彰氏
特に目覚ましいのが海外拠点の拡大。前年度比で日本はプラス3000平方メートルとほぼ横ばいであるのに対して、欧米がプラス1万8000平方メートルの6万8000平方メートル、アジア太平洋地域は2万7000平方メートル増の7万4000平方メートルにまで規模を拡大させる予定だ。
しかし、一方で「まだ埋めるべき穴がある」と語る有馬氏。「客観的事象で言うと、ヨーロッパの大陸側の体制が薄い。データセンターだけではないのですが、中東や南米もほとんどないに等しい。アジアにおいてもあまり踏み込めていない地域が若干まだあります」とエリア的な課題を挙げる。
また、NTT Comでは、各国のデータセンター事業者の買収も相次いで行っている。そうした買収の意図とメリットについて、有馬氏は次のように語る。
「各国で弊社が買っているデータセンター事業者は、ベンチャー系の同業者がやっている場合が多く、それぞれ独自の技術を持ってやってきたという感じがあります。そこを弊社がハブとなり、お互いの技術ノウハウをオープンにしていくことでカバーし合い、よりよくしていこうということで、世界中の技術を集めて研究をし、2013年東京のデータセンターでそれなりに効率性と信頼性の高いデータセンターができたと思っています」
だが、データセンターのグローバル展開には、各国やエリアによって規制がある場合も多く、思うように動きが取れない課題があるのも事実。例えばEU圏ではデータを国外に持ち出してはならないという規制があり、アジアの国においても同様の動きが出始めている。
「そういう意味で、やはり各国にデータセンター基盤がなければ、各地でのクラウドサービスというのも展開しにくくなってきている」と有馬氏。同社のクラウドのグローバル展開において、世界各国でのデータセンター建設への投資は必須条件と言えるだろう。
発表会で紹介されたデータセンターの面積など
東京五輪決定でデータセンター用地買収競争も激化
また、これに加えて、日本国内では用地の在庫の問題や機材価格の上昇という足かせ要素があるのも事実。「2020年の東京オリンピックの開催もあり、用地買収の競争も激化し、機材の価格も含めてすべて物価が上昇している。こんな時に国内でデータセンターを作ってもコスト競争で勝てないという側面もあります。日本も需要がないわけではなく、逆に増えてはいるので、本当は国内にもデータセンターを広げたい」と有馬氏。
確かにデータセンターの建設は、まったくの先行投資型の事業。その先にも必ず競争があり、必ずしも利益を回収できる投資にはならないリスクも負う。「データセンターみたいなのはインフラであっても、新しい技術の登場によって競争力を失ってしまう場合があります。どうしても古いデータセンターや規模の小さなデータセンターは競争力がなくなる。古くなってきたときに、どのようにして競争力を維持するかという課題があります」(有馬氏)
また、同社の最近の活動で目を引くもう1つが企業の買収。その大きな狙いはどこにあるのだろうか。