近い将来(それほど遠くない将来、つまり数十年以内というより数年以内の可能性が一番高い)、ほぼあらゆるものがネットワークで接続されるようになるだろう。そしてこれは文字通り、あらゆる人工物のことを指す。低消費電力のデジタル無線装置を、顕微鏡サイズより大きいあらゆるものに取り付けられるようになった現在、テクノロジの世界は、すべてのものが能動的センサを搭載し、それらが生み出したデータストリームの検出、確認、記録が可能な世界の到来に備えている。
こうした超連結性は、新たなビジネスの可能性と将来性を大きく広げる。それらのほとんどは有益なものだが、それほど良くはないものもあるだろう。
自動車のタイヤから牛乳パック、輸送用コンテナ、試験管にいたるまで、物理的に製造されたあらゆるものを取り巻くデータと、こうしたデータのダッシュボードや通知、分析、視覚化情報を常に提供する、身近なウェアラブルテクノロジの両方を組み合わせれば、職場環境はすぐに、以前はSFでしか見られなかったような、現代のサイバネティックな融合環境に変わるだろう。
悪い点について、筆者は個人的な経験から実感していることがある。「Google Glass」のようなデバイスのせいで筆者は既に、最近まで思いもよらなかったほど長い時間、この完全につながり合ったデジタル空間と仮想空間の世界を身につけたり、それを見たり、話しかけたりしている。
全てを把握するシステムと、事実上無限に存在する現実世界の計測データとのこうした融合はまさに、企業のビックデータと、あらゆる製品がつながり合う将来の環境とが出会った時に、必然的に起こるシナリオである。それは実質的に、相乗効果の定義そのものといえる。
一方では不吉な結果にもなりかねないものの、こうしたテクノロジは同時に、われわれが現在理解し始めたばかりの大きな可能性を実現するものであり、ヘルスケアや製造業、物流、輸送、そのほか多くの産業に大きな影響を与えることはほぼ間違いない。そしてこれは、本質的には既成事実である。こうした改革は既にかなり進行しているからだ。
より具体的に言えば、それはいわゆる「モノのインターネット」と呼ばれる種類のテクノロジである。モノのインターネットを実現するのは、Z-WaveやZigBee(モノのインターネットを実現する標準だが、誰もが知るレベルにはまだ遠い)のような、新しい細かなデバイスプロトコルである。モノのインターネットは、完全につながり合ったネットワーク世界の骨組みを、これまでにない形で作り替えつつある。言ってみれば、それはウェブそのものが登場して以来、初めての変化だ。こうしたテクノロジをベースとしたネットワーク対応デバイスは、新たな可能性を明確にしつつある。それは、ありとあらゆるものを離れたところから、ネットワークを介してリアルタイムで認識したうえで、そのモニタリングや計測、そして必要があればコントロールもできるということだ。
現在のところは(少なくとも職場環境についての話では)、MIT Technology Reviewが今後5年間で社会に影響を与えるとした、無人航空機やゲノム編集、ブレインスキャニング、機敏に動くロボットなどの画期的な新しいテクノロジのことは忘れよう。ここで紹介する職場環境向けのテクノロジは、それらと比べれば華やかさに欠けていて目立たないが、より実用化に近く、あなたの職場環境にいまにも登場しようとしている。
そして筆者が最近、2014年に注目すべきエンタープライズITのトレンドに関する記事で取り上げたテクノロジの多くとは違って、このような働き方の進歩は、われわれが同僚と顔を合わせずに過ごす仕事時間の大部分にわたって影響を与える。それは、コンピュータスクリーンやアプリケーション、インターネットやソーシャルメディアが現在そうであるのとかなり似ている。
これから紹介するのは、われわれの現在、そして今後数年間の働き方を変える可能性が大きいテクノロジだ。