本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米Microsoftの沼本健コーポレートバイスプレジデントと、日本オラクルの黒川竜司担当ディレクターの発言を紹介する。
「IaaSとPaaSの区別は、これからあまり意味がなくなってくる」(米Microsoft 沼本健 コーポレートバイスプレジデント)
日本マイクロソフトが先ごろ、米Microsoftでクラウド&エンタープライズ事業のマーケティング責任者を務めるコーポレートバイスプレジデントの沼本氏が来日したのを機に、グローバルでのクラウド&エンタープライズ事業の最新動向をテーマとしたプレスラウンドテーブルを開いた。
沼本氏の冒頭の発言は、その会見で、IaaSとPaaSの機能を兼ね備えた同社のパブリッククラウド「Microsoft Azure」を取り巻く競合状況について筆者が質問した際に、これから起きる現象について語ったものである。
沼本氏は会見で、同社のグローバルでのビッグデータへの取り組みや、それを支えるプラットフォームであるデータベース「SQL Server」の新製品と最新ソリューションの紹介、そして「Microsoft Azure」関連の取り組みなどを説明した。その詳細については関連記事を参照いただくとして、ここでは会見の質疑応答で筆者が聞いた2つの質問に対する同氏の回答を紹介しておきたい。
まず1つ目の質問は、Microsoftにとって非常に重要なパートナーとの協業に関するものだ。プラットフォームという観点からすると、同社のWindowsは、これまでオンプレミスでのパートナーとの協業では全方位でエコシステムを広げてきた。
だが、クラウド時代になると、これまで協業してきたベンダーも同様のサービスを展開し、つまりは競合相手になる可能性が高い。そうした中で、クラウド時代のパートナーとのエコシステムづくりをどう図っていくのかというものだ。
沼本氏はこの質問に対し、「協業か競合かではなく、協業も競合もする。こうした関係は従来と同じで決して一面的なものではない。クラウド時代といっても、今後もオンプレミスのニーズはあるし、ホスティングサービスを行うパートナーとの関係も続く。さらにプライベートクラウドにおける協業などは、これから広がる可能性がある。パートナーとのエコシステムづくりのポイントを一言でいえば、まさに適材適所。これは従来から変わらない」と答えた。
2つ目の質問は、IaaSで先行するAmazon Web Services(AWS)をどう追撃するのかだ。IaaS分野で真っ向から戦うのか。それとも同社が得意とするPaaS分野へ“土俵”を変えて戦うのかというものだ。
この質問に対し、沼本氏がまず語ったのが冒頭のコメントだ。その上で同氏は、「IaaSであれPaaSであれ、最も重要なのは顧客にイノベーションを提供できるかどうかだ。そのために、ベンダーにはたゆまぬ技術革新が求められる。私から見れば、AWSは外部の技術を取り込んでリセールしているだけのようにも映る。その点、当社には自ら開発した技術をイノベーションにつなげていく力があると自負している。そこを差別化ポイントとして攻勢に打って出ていきたい」と語った。