今回の山本氏の講演で最も耳に残った言葉は「イノベーション」である。冒頭の発言にある「イノベーションパートナー」とはその象徴的な言葉だ。ただ、顧客にイノベーションを提供していくためには、まず自らがイノベーティブな会社であり続けなければならない。その意味で、富士通にはさらなるイノベーションへのチャレンジに期待したい。
「富士通と一緒にクラウドでイノベーションを提供できればと考えている」 (日本オラクル 杉原博茂 代表執行役社長兼CEO)
日本オラクル 代表執行役社長兼CEO 杉原博茂氏
富士通が5月15日と16日の2日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催した「富士通フォーラム2014」において、日本オラクルの杉原社長が16日午後、「オラクルのグローバル・クラウド戦略」をテーマに講演した。冒頭の発言はその際、オラクルと富士通の緊密なパートナーシップぶりを表現したものである。
筆者は、富士通のイベントでオラクルの杉原氏が講演するとのことで、2つの点について話が聞ければと思い、聴講した。1つは、オラクルのクラウドサービスの全体像について。もう1つは、両社がUNIXサーバに続いてクラウドビジネスでも協業する可能性があるのか、といった点だ。
まず1点目については、結論から言うと、全体像についての説明はなかった。ただし、杉原氏は「オラクルは多種多様なクラウドサービスを展開しており、すでに多くの活用事例がある」と語り、講演でも幾つかの事例を紹介していた。
また、すでに展開している「Oracle Service Cloud」や、これから本格展開する「Database as a Service(DBaaS)」の内容についても説明。その上で杉原氏は「クラウドサービスというとパブリッククラウドばかりが話題になりがちだが、オラクルは顧客の利用ニーズに応じて、プライベートクラウドやハイブリッドクラウドにも同様に注力している」と語った。とはいえ、とくにIaaS/PaaSベースのパブリッククラウドサービスをどう展開していくのかが、現時点ではよく分からない。それを含めて、全体像が明らかになるのを待ちたい。
2点目のクラウドビジネスでの両社の協業の可能性だが、これも結論から言うと、明確な計画などの話はなかった。もし何らかの計画が示されれば、それはまさしくスクープなのだが。ただ、杉原氏は講演の最後に「オラクルはクラウドビジネスにおいて“Empower MODERN BUSINESS in the Cloud”というビジョンを掲げている。この意図するところは“Human Centric Innovation”と同じだ」と語り、冒頭の発言を続けた。
杉原氏個人の思いとも受け取れるが、米国本社グローバル事業統括のシニアバイスプレジデントでもある同氏の発言である。今後の両社の動きに注目しておきたい。