日本市場はパートナーとともに攻める
――ThingWorx(PTC)はIoTの普及推進団体「Industrial Internet Consortium(IIC)」に加盟したと発表した。加盟のメリットは何か。
IoTは新しい分野であり、マシン間でやり取りするための「コミュニケーションの標準化」などは行う必要がある。ただし、個人的には、標準化することで、IoT全体がボトムアップするとは考えていない。IoT向けアプリケーションで重要なのはスピードだ。標準化を待っていては時間がもったいない。われわれは(標準化される前でも)先行して技術を提供していきたいと考えている。
――企業がIoTを導入する場合、それにかかる時間とコストはどのくらいだと考えるか。
どの部分に導入するかで、大きく異なる。例えば、製造業が社内のワークフローで実験的に導入し、3カ月単位でPDCA(計画、実行、評価、見直し)サイクルを回しながら改善をするケースもある。しかし、自社製品にセンサを組み込み、相互接続性を実現するには、アプリケーションを開発し、テストを経た上で不測の事態に備えて用意する必要がある。こうしたプロセスを考えれば、6カ月から1年は必要だろう。それに応じてコストもかかってくる。
――今後どのような分野で、どのような使い方が普及すると考えるか。
IoTでは、すべてのプロダクトが“センサ”になり、モノの規模を問わずデータを収集する。例えばオランダのPhilipsは、電動歯ブラシにもセンサを埋め込み、「歯の磨き方データ」を収集している。
また、農業にかかわるあらゆるモノにセンサを埋め込み、温度や風速、肥料の量や散水などのデータを収集し、効率のよい農業を目指す取り組みもある。今回の基調講演で、ThingWorxが活躍している分野として、「スマートシティ」「スマートグリッド」「交通インフラ」「資源」などを挙げた。こうした分野での使い方は無限であると考えている。

ThingWorxが“フィット”する分野、スマートシティや公共インフラ、医療、農業など基本的に何でもOKという

日本でのパートナー戦略について語るFadel氏
――日本での販売戦略を教えてほしい。
ThingWorxはPTCに買収される前から日本でビジネスをしており、パートナーを通じてThingWorxを提供している。最近では、NTTドコモと日本システムウエアと提携し、ビジネスを行っている(筆者注釈:4月1日からM2Mクラウドの新サービス「Toami」の販売開始)。言うまでもなく、両社とも日本市場に精通した企業だ。われわれは強固なパートナーシップで、積極的に製品を訴求していきたいと考えている。
――IoTで蓄積されたデータの所有者は誰なのか。収集されたビッグデータはそれ自体に価値ある。ThingWorxでは収集したビッグデータを活用し、新たなビジネスを興す戦略はあるのか。
ThingWorxが販売しているのはプラットフォームであり、そこで収集されたデータは持たない。IoTで収集されたデータの所有権は、アプリケーション開発者とその顧客の契約で明確にする必要があるだろう。前述の農業の例で考えると、耕作や収穫のデータを分析すれば、来期の生産の予測ができる。どちらにデータが帰属するかは重要な課題だと認識している。