会長に豆蔵の荻原社長--シンクタンク化とグローバル化目指すCSAJ新体制のキモ

大河原克行

2014-06-20 16:37

 一般社団法人のコンピュータソフトウェア協会(CSAJ)は新会長に豆蔵ホールディングス代表取締役社長の荻原紀男氏を選出した。6月11日に開かれた第29回定時総会で決まった。

 荻原氏は1958年生まれ。中央大学商学部会計学科卒。外資系会計事務所と監査法人を経て、1996年、荻原公認会計士税理士事務所開業。2000年に豆蔵(現・豆蔵ホールディングス)の取締役、2003年に同社代表取締役社長に就任した。税理士法人プログレス開業代表社員も務める。2006年には、社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会の理事に就任。その後、CSAJ常任理事、副会長、筆頭副会長を歴任してきた。

 CSAJの筆頭副会長にピー・シー・エー(PCA)代表取締役社長の水谷学が就任。副会長には、サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏、日本事務器代表取締役社長の田中啓一氏、ネクストウェア代表取締役社長の豊田崇克氏、インテリジェントウェイブ代表取締役社長の山本祥之氏が就任した。

 名誉会長として前会長であるオービックビジネスコンサルタント代表取締役社長の和田成史氏、名誉顧問として、コーエーテクモホールディングス代表取締役会長の襟川恵子氏、専務理事には前川徹氏が就いた。27人の理事が選出されている。

荻原紀男氏
CSAJ会長を務める豆蔵ホールディングス代表取締役社長の荻原紀男氏

世界で戦うことが重要

 荻原氏は「これから10年、20年先を考えた場合に、日本のソフトウェア産業には限界がある。海外に輸出すること、海外で通用する人材を育て、海外の国や地域、企業の仕事を獲得できるような仕組みを構築すべきである。日本だけで戦うのでなく、世界で戦うことが重要。CSAJの地位を高めなくてはならない。JISA(一般社団法人情報サービス産業協会)は知っていても、CSAJは知らないという状況を変えなくてはならない」と語り、「それに向けた3つのビジョンを掲げた」とし、新会長としての方針を示した。

 1つめのビジョンは「シンクタンク化を目指す」とした。

 「経済産業省や総務省に対する政策提言を充実させる。会員企業が持っているソフトウェアはどんなものか、それがどう機能するのかといったことを世界に訴えていきたい。日本でもITリテラシが低い業界がある。そこに向けてレベルアップする施策を展開したい。新しい技術に関する情報を日本から発信する一方で、世界からの情報を受けるといった仕組みも構築したい」

 2つめのビジョンとして「グローバル化の推進」を挙げた。

 「政府が推進する海外支援はハードウェア中心であったが、ODA(政府開発援助)でもソフトウェアによる支援が必要な時期に入ってきたのではないか。オフショア開発というように、賃金が安いから海外を使うのではなく、その国の仕事を取るということにも乗り出したい。商社と同じように、海外に行っても働けるという環境をソフトウェア業界に作り上げたい。そのためには、CSAJとして海外に進出する企業を支援していきたいと考えている。ソフトウェアの品質保証制度である“PSQ認証制度”の世界相互承認も行っていきたい。支援を受けられる、あるいは指導を受けられるといったように、支払う会費に対するメリットが大きいという団体にしてきたい」

 さらに、3つめのビジョンとして、「ビジネスチャンスを拡大する」という姿勢を示した。

 「(CSAJの)認知度を高めるためには、利益を生む力を持たなくてはいけないということにもつながる」と前置きし、「東京には仕事があるが、地方には仕事がないというアンバランスが生じている。マッチングサイトを通じて、地方の企業にも仕事を提供していきたい。そのためには地域の産業関連団体との連携も必要である。ほかの経済団体が持つ情報との共有も行いたい。省庁との連携強化のほか、アクセラレータとしてスタートアップ企業を支援し、起業家を育てることも必要である。資金を投じるだけでなく、考え方や哲学、起業の仕方などを通じて、上場に向けた支援も行っていく」ことを明かした。

 荻原氏はまた「地方の会社は二次請け、三次請けの仕事に従事しているケースが多く、これではクリエイティブな仕事ができない。協会会員会社と一緒に開発することで、クリエイティブな仕事ができる人たちを地方から発掘したい。こうした活動を通じて、全国規模でCSAJの知名度を高めたい」などと述べた。荻原氏はさらに、東京五輪が開催される2020年までに現在400社の会員数を1000社にまで拡大させる考えを示した。

 専務理事の前川氏は「CSAJから派生した関東ITソフトウェア健保組合には6500社が加盟している。関東ITソフトウェア厚生年金基金にも1000社を超えて企業が参加している。だが、母体となったCSAJの会員数は約400社にとどまっている。協会に加盟することに魅力があるかどうかが鍵になる。新たな会社がここに集まれる魅力を作らなくてはならない」と力説した。

 荻原氏も「新執行部では、健保組合を作ったPCAから水谷社長、若手エンジニアの羨望の的である青野社長を副会長とする布陣とした」と語り、これも新たな会員獲得策のひとつであることを示した。

 副会長に就任した青野氏は「私自身、40歳をすぎ、社会のことを考え、個人的に業界団体がどうあるべきか、という点で思うべきところもある。クラウド化が進展する中でPCでソフトを作るのではなく、クラウドやモバイルでソフトを作るという企業が増加してきた。新たなソフトウェアの作り方が生まれてきており、今後数年で、BtoBのソフトウェア企業が数多く誕生することになるだろう。彼らを巻き込んでいかなくては、業界団体の存続する意味がなくなる。新たな企業を支援することで次の時代のCSAJに生まれ変われる」などと述べた。

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