日本IBMは6月25日、モバイル端末を管理する「IBM MaaS360」の提供を始めた。モバイル端末管理(MDM)に加え、データを保護するモバイルコンテンツ管理(MCM)、モバイル環境でセキュアにドキュメントを管理する機能、企業システムと安全に直接やり取りするイントラネットアクセス機能と、企業ユーザーが安全にモバイル端末を利用するための機能をそろえた。
提供形態もSaaS版、オンプレミス版の両方を用意。税別料金は、基本機能だけを利用した場合、SaaS版が1台あたり月額100円、オンプレミス版が1台あたりの年間ライセンス料1000円から。
日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業担当 Vivek Mahajan氏
BYODでも個人領域と企業領域を分離
日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業担当 Vivek Mahajan氏は、「IBMでは2014年のソフトウェア事業の重点領域として、ソーシャル、モバイル、ビッグデータ(アナリティクス)、クラウド、セキュリティの5分野を成長エンジン領域と位置付けている。中でもモバイルは、この業界のあり方、企業ユーザーの働き方を変え、エンタープライズアプリケーションの使い方、作り方を変えていくものとなる。IBMとしては、モバイルを利用する際のニーズである“守る、変革、つながり、構築”という4つの側面全てを取り組んでいることが強み。今回の発表は守るに該当する製品」と今回の製品の位置付けを説明した。
MaaS360は元々、2013年11月に買収したFiberlink Communicationsの製品。日本ではSaaS版の提供が2014年からスタートしているが、欧米ではすでに10年の販売実績がある。主要機能は以下の4つとなっている。
(1)モバイル導入の際に最もニーズが多い包括的なMDM。素早くモバイル端末を登録し、管理者とエンドユーザーそれぞれの負担を軽減する。インベントリやデバイスポリシーの管理と制御を提供する「Advanced Mobile Device Management」
(2)企業データを保護するモバイルコンテナ。私物端末の業務利用(BYOD)の場合、個人用領域と企業用領域を分けて利用できる「Secure Productivity Suite」で企業データをコピーしてSNSへの投稿を禁止する
(3)セキュリティで保護されたドキュメント管理、許可されたユーザーだけが必要なファイルにアクセスすることができるよう、コンテナ向けにドキュメントを配布、認証で使用許可を与え、データ漏洩防止機能で重要情報を保護する「Secure Document Sharing」
(4)仮想専用網(VPN)不要のイントラネットアクセスとして、SharePointやWindowsファイルの共有など企業内リソースの認証、暗号通信でアクセスする「Mobile Enterprise Gateway」。デバイスに保存されたデータは暗号化、情報漏洩防止(DLP)で保護される
導入事例としては、Desert Schools Federal Credit UnionでBlackberryのセキュリティシステムからの移行例がある。Blackberry時代には情報システム部門が端末を預かり、2~3日かけて設定していた。
MaaS360は、エンドユーザー自身で設定できるためサポート部門の負荷が下がったほか、エンドユーザー側も端末を手元に置いたままですむ。こうしたことが重なってIT作業時間は92%削減、MDMをサービスデスクに委託した結果、50%のコスト削減を実現したという。
IBM自身もMaaS360を導入し、1カ月で7万以上のエンドユーザーが自身で移行作業して、ITコストは50万ドル削減、導入後1カ月でヘルプデスクへの問い合わせ件数は500件以下と最小限にとどまった。
日本IBM ソフトウェア事業本部 Cloud&Smarter Infrastructure事業部長 林健一郎氏
「導入事例としては、運輸系通信業、資材提供会社、ヘルスケア施設、配送業、大学など多岐にわたる。日本では販売していなかったものの、パソコンからスタートしてさまざまな端末に対応し、10年の実績を持っている。今後も新しい端末、OSが最新のものになった際には迅速に対応していく。導入した企業の継続利用率が高く、契約更新率は97%となっている」(日本IBM ソフトウェア事業本部 Cloud&Smarter Infrastructure事業部長 林健一郎氏)
税別価格はメーラーやスケジューラーなど基本機能を利用した場合、SaaS版は1台あたりの月額利用料が100円から、オンプレミス版は管理デバイス1台あたり1年間のライセンス料金で1000円から。4種類の機能をフルに利用した場合は、SaaS版で月額800円、オンプレミス版で年間ライセンスコスト8000円程度。オンプレミス版は、企業での利用に加え、サービス事業者の利用も想定しており、提供形態も買い取りなどにも応じる。
購入前に、30日間フル機能を無料で利用できるトライアル版も提供し、「トライアルで利用し、気に入ってもらった場合にはそのまま本稼働に移行してもらうこともできる」(林氏)と広く利用を呼びかけていく。