日本オラクルは7月30日、通信業界向けに“ネットワーク機能仮想化(Network Function Virtualization:NFV)”を支援するソフトウェア「Oracle Communications Applications Orchestrator」の提供を開始した。
同社は現在、産業ごと製品の拡充を進めているが、通信業向けに関しては全方位で製品を用意する。「ビジネスをサポートする領域のソフトウェアだけでなく、通信業界に特化したパッケージを揃えるため、2011年以降、買収で製品を拡充している」(日本オラクル 常務執行役員 エンタープライズ第一営業統括 本部長 三露正樹氏)。今回の製品もその一環になる。
日本オラクル 常務執行役員 エンタープライズ第一営業統括 本部長 三露正樹氏
日本オラクル インダストリービジネスユニット グローバルクライアントアドバイザー 伊藤亮三氏
トータルで提供する強み
NFVは、2012年11月に標準化団体「European Telecommunications Standards Institute(ETSI)」が設立され、2013年10月には参照アーキテクチャと要件条件が規定された。従来はネットワーク機器として導入していたルータやゲートウェイ、ファイアウォール、ロードバランサなどの機能を標準のサーバと仮想化技術で実現するもので、通信会社にとってはネットワーク管理にかかるコスト削減、新サービス導入時の迅速に実施できるといったメリットがあると言われている。
Communications Applications Orchestratorは、仮想化された通信基盤の上で展開される通信機能を提供するソフトの導入、稼働状況などのライフサイクルを統合的に管理する。新しいサービスを展開する際に必要な通信基盤を迅速に確保し、展開できるという。2013年に買収したAcme PacketとTekelecの技術を統合した。
通信状態の評価指標(KPI)を設定し、監視することで、ユーザーの接続要求やネットワークリソースへの要求に適切に対応する。それぞれの要求に対して、必要な仮想ネットワークリソースの割り当てや展開を自動的に行い、リソースへの設定変更を速やかに実施する。
「標準規格に対応している製品は他社からも登場するだろうが、オラクルの強みは通信業界向け製品をトータルで持っていること。通信業界向け製品は個々に導入することも可能だが、セットで提供していることが強みとなってくる」(日本オラクル インダストリービジネスユニット グローバルクライアントアドバイザー 伊藤亮三氏)という。価格は現在策定中で、現在、通信事業者(キャリア)側で製品の検証を進めている。
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障害を減らしたいキャリア
オラクルでは製品ポートフォリオを拡充するために、積極的にM&A戦略を進めてきた。通信業向けでは全方位で製品ポートフォリオ拡充を進め、(1)顧客との接点となる個所の支援用アプリケーション群、(2)契約や料金支払いなどビジネスオペレーション、(3)サービス制御用ソフトウェア、(4)ネットワークコントロール用ソフトウェア、(5)エンドユーザー向けアプリケーション、(6)バックオフィスを支えるエンタープライズオペレーション――という6つで構成している。
その一つがネットワーク内のトラフィックやエラー、応答時間といったデータを集めて分析するビッグデータ系製品。異常動作の予兆を検知し、故障が起こる直前段階で対処。故障が起こることをスタッフ全員が把握するために、リアルタイムの動作状況と過去情報を可視化し、装置の障害管理機能を補完する情報を取得し活用する。
「現在、2時間以上継続して3万人以上に影響があった重大な事故が起こった場合には、キャリアは総務省に報告する義務がある。2015年にはさらに厳しい基準となることが決定しており、キャリア側はなんとか時間内に小規模な障害で済ませたいと考えている。このビッグデータソリューションは、こうした問題を回避するとともに、キャリアの差別化策として進められている利用者が快適と感じるネットワークとするためのエクスペリエンスを監視する」(伊藤氏)
ビッグデータ以外にも、契約から請求まで一連の流れをサポートする製品、携帯電話ネットワークの3GやLTE、VoTEといった通信向け、IP網を活用したアプリケーションを提供するためのものなど通信キャリア向け製品を用意している。