パネリストらは、Linuxカーネルのサイズを小さくしつつ、よりシンプルにすることの難しさについても話し合った。同時に、複雑なコードをクリーンアップすることへの称賛もあった。
例として、Linuxカーネルのリード開発者の1人であるAndrew Morton氏は、Andy Lutomirski氏の仕事を挙げた。同じくパネリストの1人だったLutomirski氏は、32ビットソフトウェアを64ビットのLinuxディストリビューション上でうまく稼働するようにしていた。こうしたパッチが誰かにとって重要かどうかという点では、多少疑問があった。しかしMorton氏は、「それはValve(ゲーミング環境「Steam」のメーカー)にとっては重要だということが分かった。つまり、ゲームをするのが好きな人は、Andyに借りがあることになる。Andyの仕事のおかげで、ゲームが速く動くようになったからだ」と述べた。
パネリストらは、Linuxカーネルがいかにコードメンテナーを必要としているかについても話し合った。Torvalds氏は、「実際には誰も使っていない半端なアーキテクチャ」にはメンテナーがいなくても構わないと述べた。「より大きな問題は、メンテナーが1人だけの分野だ。その人が病気になったり、休暇を取ったり、あるいは非常に忙しくなってしまったら、(自分のパッチを承認してもらいたい)開発者はそれ(ボトルネック)に苛立ちを感じるだろう」(Torvalds氏)。それでも、「Linuxはx86のメンテナーたちによって大きな成功を収めてきた」と述べている。
「ARMのクリーンアップは、かなり改善されてきている。私がARMのマージをしていたころは、自分を撃ってARM開発者も何人か道連れにしたい気分になったものだ。今ではずっと手間がかからなくなり、ARM開発者は複数のメンテナーによるアプローチを取っている。ARM開発者は現在、1つの共通ツリー上で協力して作業し、コードの統一に取り組んでいる」(Torvalds氏)。ただし、これは「現在進行中のプロセス」だと言っている。
サムスンのLinuxカーネルのシニア開発者であるShuah Khan氏は、メディアデバイスの電力管理が依然として問題である理由は、さまざまなグループからの異なるドライバが関係していることと、一部の「メンテナーがメディアのユースケースを理解していない」ことだと述べた。それでもKahn氏は、Torvalds氏の意見を繰り返して、「これは問題ではなく、プロセスだ」と結論付けた。
Morton氏は、自分も「複数のアーキテクチャや設計に関係するドライバを扱う作業をする」ことが多いと述べた。問題が起きた時の同氏の解決法は何だろうか。「私は年を取り過ぎて、もうバグの修正はできない。代わりに、『誰をおだてたら、自分のためにこれを修正してくれるだろうか』と考える」(Morton氏)
全般的に見れば、パネリストがLinuxの状況を検討した結果として、一部の古いコードにまだ多少のクリーンアップを行う余地があり、より良い解決法を必要とする問題がまだあると考えられるが、Linux全体としては申し分のない状態だというTorvalds氏の意見には全員が賛成した。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。