利便性の革新
しかし、とりわけAWSがそれほど便利なのは、なぜなのだろうか。その理由を理解するには、同社のエンジニアリングに注目することが極めて重要だ。
CloudscalingのCEOであるRandy Bias氏が的確に主張するように、AWS事業の特質の1つは、規模の経済によってもたらされているが、その意味は多くの人が考えるものとは異なる。
残念なことに、多くの人は「規模の経済」は「購買力」と同じことだと決めてかかる過ちを犯す。購買力は規模拡大を達成する要素の1つになることはあるが、構造や持続可能性の点でアドバンテージになることは滅多にない。同じ規模の資本を操ることができるほかの企業に対してアドバンテージにならないのは確実だ。
ここで重要な本当の規模の経済は、AWS(やほかのクラウドプロバイダー)のコスト構造に直接影響を及ぼす技術革新を引き起こしてきた、研究開発への大規模投資だ。
同氏が結論づけているように、パブリッククラウドは「購買力やアウトソーシングの勝負ではなく、革新を競い合う勝負であり、それだけのことである」。
これまでのところ、その革新の勝負で勝利を収めているのはAmazonだ。Cockroft氏が主張するように、AWSはライバルの「何年も先」を行っている。AWSで動作する巨大なアプリケーションのおそらく最も顕著な例を構築したCockroft氏が言うのだから、それは事実なのだろう。
頂点に君臨するAmazon
もちろん、AWSは現在、研究開発に多額の投資を行う余裕がある強力なライバルとの競争に直面しているが、それ以外の全ての企業は、AWSに追いつくためにやるべきことが山ほどある。AWSに追いつくのは不可能なことではないが、かなり厳しい。
これを全体的な視点から見てみよう。AWSのシニアバイスプレジデントであるAndy Jassy氏は、「われわれは非常に速いペースでイテレーションと機能追加を行っている。2013年2月からの13カ月間に、『Amazon RedShift』だけで56の新機能が追加された」と発表している。その革新のペースを1400種類のAWS製品全体に拡大して考えると、AWSに追いつくのがどれだけ難しいことかが感じられるはずだ。
値下げをするのは簡単である。エンタープライズが喜んで料金を支払い、割高でも喜んで料金を支払うように思えるものを構築するのは、それよりもはるかに難しい。AWSはそれを成し遂げてきたからこそ、今も最高のパブリッククラウドとして君臨している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。