パブリッククラウドコンピューティングは、初期の頃には大げさな宣伝文句が飛び交ったが、安いからという理由で人気が高まったことは一度もない。突き詰めていくと、「Amazon Web Services」(AWS)のようなパブリッククラウドコンピューティングサービスを実際に牽引しているのは利便性で、その利便性を支えているのは留まることのない高度な技術革新だ。
AWSは現在、MicrosoftやGoogleとの競争に直面しているが、凄まじいペースで革新を牽引するAWSの能力に比肩する企業はまだ1つもない。
実はそれほど安くないパブリッククラウド
このところ、AWSは、大幅な値引きを提供することに前向きなGoogleやMicrosoftといったライバルや、よりコスト効率の高い方法で独自のインフラストラクチャを運営できると考えている新興企業などから攻撃を受けている。
後者を主導する投資家のBrad Feld氏は、次のように主張する。
企業がAWSに支払う月額料金が20万ドルに達すると、データセンターのベアメタルに独自のインフラストラクチャを構築することの是非について、議論が始まる。これは究極的には資本コストに関する議論になる。私は、多くの資本コストがAWSからベアメタルに移っていることに気づいている。そして、大規模な環境のさまざまなコストを全て含めると、粗利益が20ポイント(あるいは2000ベーシスポイント。例えば、65%から85%)以上変わるのを見てきた。大規模な環境のあらゆるコストを含むモデルに対して極めて安い今日のハードウェアの資本コストを考慮に入れると、ものすごいことである。
Server Densityの創設者兼最高経営責任者(CEO)のDavid Mytton氏は、「一旦規模を拡大したら、AWSなどのパブリッククラウドは柔軟性を除いて、割に合わなくなる(サポートやコスト、制御)」と言っている。つまり、大規模なパブリッククラウドが持つ唯一の真の利点はその柔軟性である、ということだ(Netflixの元クラウド担当チーフであるAdrian Cockroft氏は、そうした計算法に疑問を呈する情報を提供しているが、TechRepublicはここではどちらが正しいのかを判断しないことにする)。
それを考えると、初期の頃のパブリッククラウドコンピューティングの議論は、AWSなどのクラウドサービスはほかの選択肢より安いことを示唆していたが、最近の議論では、クラウドコンピューティングはほかの選択肢より安くないかもしれないものの、パブリッククラウドへの支出は予想しやすくなり、支出が設備投資から運用費に移っていることが主張されているのは不思議なことではない。
これは重要な変化だが、多くの企業がAWSを利用していることを裏付けるには十分ではない。AWSの顧客は札束に火を付けて、燃え上がるのを笑いながら見ているわけではない。RedmonkのアナリストであるStephen O'Grady氏が何年も前に強調したように、AWSの顧客はコストよりむしろビジネスの俊敏性(と利便性)に魅力を感じて同サービスを選んでいる。