クラウドサービスのマーケットプレイスは、すでに多くのベンダーが手掛けているが、SaaS、PaaS、IaaSをすべて盛り込んだ形でグローバル展開しているはIBMだけだ。むしろ、IBMが総合クラウドサービスベンダーとして本格的に乗り出したことで、マーケットプレイス市場が本格的に動き出しそうだ。
「クラウド事業は競合との境目があいまいになっていく」 (日本マイクロソフト 高橋明宏 執行役常務)
日本マイクロソフトの高橋明宏 執行役常務
日本マイクロソフトが先頃、法人向け事業における最近の取り組みについて記者説明会を開いた。執行役常務でゼネラルビジネス(中堅中小企業向けおよびパートナー事業)部門を担当する高橋氏の冒頭の発言は、クラウド事業における競合状況について語ったものである。
会見には、高橋氏とともにエンタープライズビジネス(大企業向け事業)およびパブリックセクタービジネス(公共向け事業)の部門トップが顔をそろえ、それぞれの事業の取り組みや今後の重点分野について説明した。会見全体の内容については関連記事を参照いただくとして、ここではクラウド事業における高橋氏の発言に注目したい。
高橋氏はゼネラルビジネス部門のクラウド事業への取り組み状況について、「クラウドサービスとしては、IaaS/PaaSのMicrosot Azure、SaaSのOffice 365およびDynamics CRM Onlineの3つを中心に展開している。また、パートナー企業にこれらの販売を強力に押し進めていただくためにインセンティブを手厚くしていく計画だ。
これにより、クラウドへの移行に伴って初期の段階で収益が減少する分を補っていただきたいと考えている」と説明。ちなみに、注力する3つのサービスについて社内では「クラウド3兄弟」と呼んでいるそうだ。
では、冒頭の発言にある「競合との境目があいまいになっていく」とはどういうことか。高橋氏は、「クラウド事業では、競合相手であってもお互いにメリットがあれば、一定の領域で手を結ぶことは往々にしてある。例えば、オラクルやSAP、セールスフォース・ドットコムとは、それぞれのサービスとMicrosot Azureを連携させる形で手を結んでいる。また、Windowsベースのホスティングサービスを展開しているアマゾンも、競合相手でありパートナーでもある」と説明した。
その上で、「そうした中で、今後はそれぞれにビジネスとしてのオポチュニティ(販売機会)をどれだけ獲得していくかが、クラウド市場での争点になっていくのではないか」との見解を示した。かつては市場制覇主義に映ったマイクロソフトも、クラウド事業では“全方位外交”を進めているようだ。これも時代の変化といえそうだ。