SaaSでERPの前提条件が変わる--インフォアのフィリップスCEO

大西高弘 怒賀新也 (編集部) 山田竜司 (編集部) 2014年10月30日 07時30分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 インフォアジャパンは10月18日、クラウドERP「Infor CloudSuite」を日本で提供すると発表した。Infor CloudSuiteは、業界特化型のアプリケーション群をクラウドで提供するサービスだ。

 日本ではまず、自動車、中小企業全般、ファッション、食品・飲料、製造業といった各業界向けのアプリケーションが提供されることになるが、これらは、「Amazon Web Services(AWS)」上で展開される。

Inforの最高経営責任者(CEO)、Charles Phillips氏
Inforの最高経営責任者(CEO)、Charles Phillips氏

 Inforはこの3年間にアプリケーション分野を中心に約10億米ドルを研究開発費に投じている。さらに、2013年度はエンジニアを新たに約1000人採用するなど積極的な拡大策を取っている。業績も好調で、2014年第1四半期のクラウド製品の成長率は70%だという。

 クラウドERPが市場に受け入れられることによって、積極策が功を奏し実績も上がっているという同社をけん引しているのは、最高経営責任者(CEO)のCharles Phillips氏の手腕と言われている。

 Phillips氏は米Oracleの元プレジデント兼理事会役員で、2010年に現職に就任してから企業システムの根幹となるERPの分野で新たな潮流を作り出してきた。

 Infor CloudSuiteは、グローバルで7万3000社の顧客が利用している。オンプレミスのERPからの移行をスムーズに実行させる技術や、他システムとの連携を容易にする拡張アプリケーションを積極的に開発しており、これが新規顧客を増やすカギとなっている。すでに、大手ハイテク企業13社のうち12社、自動車部品サプライヤ上位100社のうち84社、産業販売企業上位50社のうち31社などが導入している。

 Inforが作り出した新たな潮流は、会計機能だけといったものではなく、さまざまな機能要件を満たした統合型のERPをSaaSで提供していることだ。

 多くのユーザーはどこに魅力を感じて導入をしているのか。また、Inforが仕掛けたこのトレンドがどこまで広がっていくのか。そのあたりのことを聞くため、Phillips氏に話を聞いた。

ユーザーの評価

 ユーザーが高評価している点について「それは業種特化型だからだと言えるでしょう」とPhillips氏。「従来型のERPパッケージの機能をSaaSで提供しても誰も利用しようとはしない。多くの場合、自社の業務に合わず、カスタマイズが必要なのが分かっているから」と話す。

 Inforはそこで、各業種に特化し、ラストワンマイルの機能まで搭載したという。「スピードとコストのメリットを求めるユーザーが利用したくなるのは当然」と自信を見せた。

 “ラストワンマイル”とは、簡単に言えば「かゆいところにも手が届く」機能ということ。業種特有の機能をCloudSuiteに詰め込んだという。

 しかし、ERPは経営の根幹を支えるシステムとしてつい最近までフルスクラッチで構築するのが当然とされてきた。独自に機能を開発したシステムを持つことが、競争力の源泉と思われてきた面もある。最近では、ERPをパッケージ製品によって導入する企業は増えてきたが、それでも、さまざまなカスタマイズを施すケースが多い。

「欧米も状況は日本と同じ」

 そんな日本の状況を話すとPhillips氏は次のように話した。

 「欧米でも同様です。カスタマイズしたことを誇りに感じる人は少なからずいた。企業がなぜカスタマイズするのかと言えば、イノベーションのためです。しかし、時間が経過するにつれ、一体何のためのカスタマイズだったか分からなくなってくるケースが増えてきたのです。誰が何の目的でこんなカスタマイズをしたのか。イノベーションが達成されたのかどうかも分からなくなってしまう。そして、バージョンアップのたびに多大な労力、コスト、時間が費やされ、業務に大きな影響が出てしまう。つまりカスタマイズした部分がモンスターのように企業の体力をむしばむというわけです」(Phillips氏)

 これは今多くの日本企業が抱えている問題でもある。パッケージ製品を使っていても、Phillips氏が指摘したようなことで多大なコストと時間が費やされている例は枚挙にいとまがない。

 「業種特化型のERPを提供する以上、当社も常にユーザーの意見を聞き、素早く必要な機能を追加していく努力が必要で、現在も当社のエンジニアがそのための努力を続けています。しかし、業種特化型であることは、こうした機能追加を迅速にできる利点があるのです。どの業種にも対応するERPではこうはいかない。自動車メーカーが必要とする機能と飲食業界がどうしても欲しい機能は開発期間もプロセスもまったく違うからです。そういう各業界のニーズに迅速に応えていくには、業種特化型のSaaSでなければならないのです」

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]