先週初めに米国で運用が始まったAppleの非接触決済サービス「Apple Pay」。この「Apple版おサイフケータイ」による支払いを大手ドラッグストアチェーン2社――CVSとRite-Aidが受け付けないことにしたという話題がこの週末に米メディアでちょっとした話題になっていた。
流通事業者とカード決済事業者との間で何年も前から続いてきた決済手数料をめぐる争いが、Apple Payの稼働でいっきに火を噴いたという状況らしい。
CVSとRite-AidはいずれもApple Payへの対応を正式に発表していたわけではないが、それぞれの店舗にNFC(Near Field Communication)対応のPOS端末をすでに導入していたので、iPhone 6のユーザーはApple Payを使える状態にあった。
ところが、後述する事情から両社がこのPOS端末のNFC(Near Field Communication)通信機能をオフにすることを決め、その旨の通達を店舗に出した。またこの措置に伴い、Google PayなどNFCを使うほかの決済手段も利用できなくなった、という経緯があったようだ。
Apple Payの開始時に「全米約22万カ所で使える」とAppleは宣伝していたが、CVSとRite-Aidの店舗のこの22万箇所のなかに含まれていたらしい。Bloomberg記事には両社の店舗数について、CVSが約7700、Rite-Aidが約4570という数字が出ている。
CVSとRite-AidはそれぞれMerchant Customer Exchange(MCX)というコンソーシアムのメンバー。MCXは、小売最大手のWal-martが音頭を取って立ちあげた団体=サービスの運営企業で、ほかにTarget、Best Buy、Searsといった小売事業者や、GAP、Banana Republic、Old Navy、Gigant Eagleなどのアパレルチェーン、Shell、Exxon Mobil、76といったガソリンスタンド、コンビニの7-Eleven 、それに航空会社のSouthwestなども同社の技術をサポートすることになっている。
MCX加盟各社の扱い高は合計で年間1兆ドル超というから、決済手数料(2~3%)だけでもかなりの金額に達することは容易に想像がつく。なお、この売上金額は米国小売市場全体の2割以上、店舗数の合計は約11万箇所といった数字もThe Newyork Times(NYTimes)記事には出ている。
Wal-martやBest Buyでは、Apple Payの発表直後にさっそく「対応せず」との意向を明らかにしていた。その際には、Apple Payでは買い物客が何を買ったかもわからない(顧客の購買データが収集できない)し、クーポンやポイントを使った販促や顧客つなぎとめもできないため、といった理由が挙げられていた。