可視化の切り札として注目の「DCIM」
機器や設備から膨大な量の情報を収集して現在の状況を正確に可視化し、データセンターの運用改善につなげる。その切り札として、数年前から世界各国のデータセンター事業者やデータセンターを自営する企業の間で脚光を浴びているマネジメント術がある。
データセンターの機器や設備から使用状態や運用状態を示す各種情報を収集・管理する「DCIM(Data Center Infrastructure Management)」だ。
手作業も残るデータセンターの運用や監視の自動化を推進すると共に、収集した情報の分析を通じて、機器や設備の増強や性能の最適化を図りやすくなると期待されている。
DCIMでは、個々のサーバの稼働状況から室内の温度・湿度分布、空気の流れ、機器と設備の電力消費量にいたるまで、データセンターに関連するあらゆる情報を統合管理する。実践するためには、データセンター全体を俯瞰してマネジメントするのに必要な機能をひと通り備えたシステムを導入するのが一般的だ。
新たに導入するDCIM用のシステムは、IT機器の管理システムや設備の管理システムと何が違うのか。各システムとの関係を把握するために、DCIMシステムが備える主要な機能を下図に示した。

451Groupに図使用許可をとること
この図の左端に示した設備管理は空調の稼働監視や動作制御などに用いるツールが担い、右端のIT機器管理はサーバやネットワーク機器の運用監視ツールなどが担う。いずれもすでに導入している企業は多い。
DCIM用のシステムは、この両方のシステムから情報を集約してデータセンター全体の稼働状況の可視化を実現し、中央に示した大きく4つの機能を提供する。
(1)環境モニタリングとレポーティング
データセンターの電力消費量を監視し、単位時間当たりやラックごとなどに詳しく分析することで、コスト削減や予算編成の指針となるレポートを作成する。
(2)資産管理および構成と変更管理
データセンターのレイアウトを模した画面から視覚的にIT機器や設備の配置や構成を管理すると共に、構成変更時の進捗などを管理する。
(3)電力とエネルギーの測定およびシミュレーション
IT機器や設備の仕様や容量、電力消費量の実測値などを基に、冷却能力をシミュレーションしたり、空調静止時のデータセンター内部への影響を分析したりする。
(4)パワーマネジメントとパワーキャッピング
データセンター内の温度分布やサーバの処理量によって変動する電力消費量を管理し、あらかじめ設定した電力消費量の最大値を超えないようにIT機器や設備の稼働状況を制御する。