異端とされたアップルの垂直統合モデルに影響受ける
Vembu氏の話には、Steve Jobs氏の影響が感じられる。禅を好み、自ら開発した製品やサービスのアーキテクチャを「美学」という言葉で表現しようとする。タイポグラフィーにこだわりを持ち、自らフォント開発を手掛け、製品内部の配線の形状にまで厳しくチェックしていたといわれるカリスマ経営者であるJobs氏を、Vembu氏はかなり意識しているという。
「かつて、『選択と集中』という言葉がもてはやされたとき、Appleは半導体の開発から、OS、開発言語、アプリケーションまで手掛け、より深い垂直統合のビジネスモデルを進めていきました。それは時代にそぐわないものだと批判的に見られていたが、今は最も優れたユーザーエクスペリエンスを提供する企業です。われわれも、最も優れたユーザーエクスペリエンスを提供することを目的に事業を行っているのです」
独自のフレームワークで効率的に優れたサービスを開発することは、すべて最高のユーザーエクスペリエンスを提供することにつながるということなのだろう。Zohoは、ハードウェアを開発しているわけではないが、クラウドサービスの分野では垂直統合モデルを取る珍しい企業ともいえる。
独自のフレームワークであるMICKYは、2015年中に公開する予定。ユーザー企業やサードパーティーがこれまで以上にサービスの種類を広げ、改善を促す考えだ。
魔法のようなユーザー体験はビッグデータから
Zoho自体が今後どのようなサービスを構想しているのか聞いてみた。
「アプリケーションは極めて軽量で、バックヤードではビッグデータを活用してかなり複雑なシステムが稼働しているイメージです。複雑なバックヤード部分をスピーディーに開発していきます。アプリケーションではなく、データが各サービスに大きく作用します。例えば、重要顧客のメールなどのメッセージを自動的に選択し、スマートフォンやスマートウオッチなどの端末からプッシュコールしたり、関連ニュースを知らせたりします」
Vembu氏によると、こうした仕組みにはビッグデータの活用がカギを握っているという。Zohoでは、独自のフレームワークで迅速にデータから得た知見を提供できるという。
「ユーザーはとてもシンプルな形でサービスを利用できなくてはならない。その上で、ビッグデータから得られたインテリジェンスを使って仕事に役立つ情報を自動的に提供したり、複数のアプリケーションを別々に使い分けている状態をシームレスなものに変えたりしていくのです」
Vembu氏は、現在のビジネスワーカーは、アプリケーションに振り回されていると指摘する。「データをアプリケーションの奴隷のような状態から解放したいのです」。