アクセンチュアは米国時間の3月10日、世界の国や地域におけるデジタル技術の活用度合い(デジタルデンシティ)に関する調査結果を発表した。デジタル技術の活用が進むと、世界のGDP(国内総生産)上位110カ国のGDP総額は2020年に1兆3600億ドル増加するという試算している。調査の手法として採用した「アクセンチュア・デジタルデンシティ・インデックス」は、デジタルデンシティを測定したもので、企業の戦略的な投資意思決定を支援する指標と説明した。
各国や地域のデジタルデンシティは、オンライン上で行われた取引の数や、クラウドなどのプロセス改善に寄与する関連技術の利用状況、企業におけるデジタル技術の浸透度、新しいデジタルビジネスモデルを受け入れる経済体制など、50以上の指標によって測定される。
マクロ視点では、デジタルデンシティ(100点満点)が今後5年間で10点上がる場合、先進国ではGDP成長率が毎年0.25%ずつ押し上がり、新興国では毎年0.5%ずつ押し上がることが分かった。米国であれば、2020年にはGDPが3650億ドル増加し、ブラジルやインド、中国のような新興国であれば、970億ドルから4180億ドルの幅で増加する。
アクセンチュア・デジタルデンシティ・インデックスは、経済活動におけるデジタルデンシティを変化させる要因を示している。これらは、企業の経営幹部や政治指導者がデジタル戦略立案、進捗状況の評価、最終的な投資の意思決定の判断基準となり得るとのこと。
デジタルデンシティには、国や地域のデジタル化における相対的な強みに応じて、企業が行うさまざまな事業活動を世界のどこで実行することが最適であるかを判断する使い方もあるという。今回の分析によると、デジタルデンシティのトップはオランダで、次に米国、スウェーデン、韓国、イギリス、フィンランドが続く。

デジタルデンシティスコアの国別ランキング
デジタル化による成長のために必要な施策は国や地域によってさまざまだが、以下4つの項目が成功要因として共通している。
デジタル市場の創出
商品やサービスを提供する際や新たな顧客を獲得する際、他社と協業する際に、高度にデジタル活用していることが重要という。従来の産業の境界線が曖昧になる中で、各国政府は、消費者利益を保護しつつも、企業と連携して革新的ビジネスモデルやスキルの必要性を理解し、新たな市場の形成とその健全な育成を統制する手法を明確にしておく必要がある。
企業活動のデジタル化
企業や政府は、単に主要なビジネスプロセスを自動化させて効率性と生産性を高めるだけではなく、ビジネスプロセス自体を再創造するために、デジタル技術の活用を進めていくべきという。
バリューチェーンのデジタル化
土地や資本、人材、工場設備、ソフトウェア資産などの主要な経営資産を、デジタル技術によって相互連携させることで生産性向上やコスト削減を実現していくことが成功要因という。モノ同士やモノと人がつながり、プロセス最適化や製品とサービスの新たな融合が実現することで、モノのインターネット(IoT)がバリューチェーンのデジタル化をさらに加速させると予測している。
デジタル化を加速させる制度改革
デジタル時代におけるビジネスモデル発展を支援するための政策策定や規制改革を推進することは、成功のために欠かせない取り組みだという。デジタル化による成長のためには、超高速回線やモバイル向け高速通信のインフラを整備することが重要とした。
一方で、政府は起業家によるデジタル技術を活用した新たなビジネス創出も支援しなくてはならない。また、規制環境を整備することや、デジタル時代に求められる人材を育成するための革新的な施策を打ち出すこと、さらに市民や民間企業の政府に対する信頼や透明性を維持することにも注力するべきとしている。