消費者の行動モデルの変化
デジタリゼーションは同時に消費者の行動変化も推進している。消費者は、より便利でより魅力的な商品や体験が提供されるチャネルを自由に選択するようになっている。消費者の期待値はこれまで以上に高まっており、「自分の趣向を理解し、それにあわせた商品やサービスを提供してくれること」「それをわかりやすく証明してくれること」「万が一期待はずれだった場合は、有効な解決策をリアルタイム、ストレスフリーで提供してくれること」を望んでいる。上記をすべてミスした場合、即座に企業を切り替えていく。
そのインパクトは大きく、アクセンチュアの調査によると、消費者の変化によって切り替わる消費の合計金額は、日本では年間約25兆円に及び、可処分所得の約6%に相当すると試算されている 。また、同じ調査によると、その影響は小売業界が最も多く受けるという結果も出ている。「サービスや体験上の不満により、特定企業から他企業へ消費を切り替えた」と答えた消費者の割合について、電力やホテル、保険などの業界では1~7%の間であったのに対し、小売業界だけが16%と突出していた。
各小売業にとっては脅威であると同時に大きなチャンスでもある。消費者の変化はその購買活動・意思決定プロセスの変化といった形でも現れる。態度変容のプロセスが「発見→検討→評価→購入→消費」といった線形的なものではなくなってきている。図1にアクセンチュアが定義している新たな態度変容モデルを表している。ポイントは下記3つとなる。

- ダイナミック 発見や検討、評価、購入、消費といったプロセスが双方向的に行われ、かつそのスピードも格段に速くなる。認知した瞬間に購入することもできるし、欲しいと思った瞬間にサービスを受けることも可能となっている(例えば電子書籍やオンラインでのレンタル映画など)
- チャネルフリー化 いつでもどこでも消費者は好きなタイミングで好きなチャネルを使い分け、商品やサービスにリーチすることができる。モバイル端末が1つあれば、情報を集めたり、検討したり、評価することが可能だ。また、その媒体もSNSや動画サイトなどのソーシャルサービスや、企業独自のサイト、アプリ、メールのほか店舗などさまざまである。
- 連続性 消費することで終わるのではなく、それが次の評価や購入、友人・知人への購入喚起など、評価を中心としてさらなるアクションにつながっていく。消費者同士だけでなく、企業との情報共有も容易になる。当然のことながら、連続性は企業にとっても大きな意味を持つ。継続的な消費につなげていくためのアクションをしていく必要がある。