ジョブズ氏との思い出も--京都大好きなエリソン氏、日本文化を語る

大河原克行 2015年04月08日 18時50分

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 新経済連盟は4月7~8日に東京・紀尾井町のホテルニューオータニで「新経済サミット2015」を開催。開催2日目の基調講演に、米Oracleの取締役会経営執行役会長兼最高技術責任者(CTO)であるLarry Ellison氏が登壇した。

 新経済連盟の代表理事であり、楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏が聞き手となり、Ellison氏が持つ京都・南禅寺の何有荘や日本の文化、IT業界の動向やOracleの事業などが語られた。

Jobs氏との思い出

 冒頭、Ellison氏は三木谷氏の質問に答え、京都に持つ日本庭園の話から切り出した。

Larry Ellison氏
Oracle 取締役会経営執行役会長兼CTO Larry Ellison氏

 「私は20代にAmdahlに勤務しており、日本で富士通との提携の仕事に携わっていた。その頃、初めて京都を訪れ、日本庭園に感動した。日本庭園は人間が進化した環境を再構築している。水の流れる音や風の音、眺め、香りが安心感を与え、生命感を感じ取ることができる。京都出身の技師を使って庭を作り、移転するまで14年間かかった」などとした。

 また「日本に来ると『ものの哀れ』というものに触れることができる。素晴らしいものも一瞬にしてなくなってしまうということを理解できる。一日一日を宝のように大事にし、何か達成しなくてはならないという気持ちになる」と述べた。

 その後、東京で生活していたときには、日立製作所に電車で通勤。日立の野球チームに所属したり、パンポンと呼ぶ茨城県日立市特有のスポーツに講じた思い出話にも触れた。スポーツに関連して、2013年に国際ヨットレースのアメリカズカップで8対1から逆転して優勝したことにも触れ、「あきらめなければ達成できる事例のひとつ」と位置付けた。

 Ellison氏はSteve Jobs氏との思い出についても言及した。「共通しているのはお互いに完璧であることに執着する性格。だが、日本にくるとすべての人がそうであることがわかった。これが日本の文化を作っている。継続的に改善し、完璧を追求する企業が日本で成功している」

Ellison流企業買収の方法論

 Ellison氏は現在のOracleの事業について触れながら、次のように切り出した。

 「IT業界はまだ成長するが、根本的なITアーキテクチャはようやく成熟したといえる段階に入ってきた。発電し、それがわれわれに届くまでの仕組みは非常に複雑である。飲料水も同様であり、それでも利用者は水道の蛇口をひねれば水が出てくるという簡単な操作で利用できる。インターネットが登場してから、デバイスから複雑なものを排除でき、シンプルな端末を利用できるようになった。データのバックアップもサーバに委ねることができ、コンピューティングは必要なものをクラウドから購入できるようになった。ようやくITが水や電力の供給と同じようになった。複雑さが利用者から見えなくなった」

 そして、「OracleとMicrosoftの2社だけが、クラウドにおける3つのレイヤでビジネスを展開している。だが、Oracleは、PaaSでは最も評価が高いOracle Database、最も人気が高いプログラミング言語であるJavaをクラウドで提供している。開発したアプリは、ワンタッチでクラウドとオンプレミスを行ったり来たりできるといった特徴がある。モダン化されたユーザーインターフェースを持ち、グループで情報を共有し、すべてがモバイル端末で利用できる」とした。

 経営の考え方にも触れ、「常に学習し、改善することがOracleを動かしている。常に他社が何をしているのかということに注目しなくてはならない。他社がもっと優れたことをしているのではあれば、それに追いつかなくてはならない。あるいは、ほかの人のイノベーションを活用するという方法もある。こういうことをやっていかなければ負けてしまう。負けるよりは、勝つ方がいい」と語り、こう続けた。

 「15年以上前にSun Microsystems創業者であるScott McNealy氏と会話した。McNealy氏に、一番の過ちは何かと聞いた。すると彼は、戦略的に会社を買収する際に価値について、あまりにも細かく見てしまった点だと回答した。時価総額が大きかった時には、どんどん買収すればよかったと語っていた。Oracleも一時期は買収をしなかった時期があった。他社の動きをみて、こんなものは自分で作れると思っていたが、それは大きな過ちであった。2個は作れるが、10個は作れない。その結果、機会損失が生まれてしまう。顧客を獲得するためには時間がかかる。お金を出して買った方がいいというとことがある」

 ここでは具体的な買収例も挙げた。

 「Amazon.comのスピンアウトの会社も買収したが、決して業績はよくなかった。だが、技術が欲しいと考え、20人の優秀なエンジニアと1年間ほどの時間を買い取ることができた。Sun Microsystemsは55億ドル相当の現金を払って手に入れた。これは盗んだのとも同じ、逮捕されても仕方がないほど安価にハードウェアと優秀なエンジニアを手に入れた。このとき、MySQLも手に入れたが、これはSun Microsystemsが10億ドルで買収したものをわれわれが手に入れたものである。MySQLとともに、Java、SPARCも同時に手に入れることができた」

 Ellison氏は、世界最速のマイクロプロセッサがSPARCであること、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)時代ではJavaが重要な役割を果たすことを示し、「Javaは、HadoopやSQLとの連携でIoT分野でも優位な技術になる」と述べた。

 新たな企業の創出については、「そんなに多くGoogleやAppleが生まれるわけではない。かつては500社がPCを作っていた。これから10年かかると、どれぐらいのPCメーカーが生き残っているのか。起業家やベンチャーキャピタルは、ラスベガスでギャンブルをしているようなものであり、その多くは失敗する」などと語った。

 日本の経済界への助言として「日本は、もっと起業家を支援することが大切。日本の起業家には、数多くの才能を見ることができる。日本発の優れたコンピュータゲームがあることでも、それが証明される。しかし、日本の優秀な人材はベンチャー企業に行かないという傾向がある。日本の経済は、大企業のイノベーションだけでなく、イノベーションを生む起業家との組み合わせで成長することになる。そうした意味でも、新経済サミットのような会議を行うことが必要」である。

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